現在、国内メーカーでは唯一ハイクオリティなアーケードスティックを継続的に販売している「HORI」。
そんなHORI製アケステの主力商品が『リアルアーケードPro.(略してRAP)シリーズ』である。
しかしこのRAPシリーズ、バリエーションが無駄に多い。特にPS4世代になってからはラインナップの多さに拍車がかかっている感がある。
これから始めてRAPを買おうという人の多くは、プロ格闘ゲーマーに憧れて格ゲーを始めた初心者なんじゃないかと思うが、ただでさえ複雑な格ゲーを始めようという人が、さらに複雑なRAP選びで迷ってしまいかねない。
そんなわけで今日はRAPシリーズの歴史、および現行であるPS4世代のモデルについてものすご~く簡単にまとめてみたい。主に自分の記憶で書いてるので間違いがあったらご指摘頂けると幸い。
PS2時代
リアルアーケードPro.
RAPの歴史に始めてその名を刻んだのは『リアルアーケードPro.』。対応ハードはPlayStation2だった。
発売は2004年。13年前かー。下手したらコレ読んでる人がまだ生まれてないかもしれない。最も自分も当時はRAPなんて知らなかったけども。
ゲームセンターに置かれているアーケード筐体を模した形状、そしてなによりレバーにアーケード筐体と同じ「三和電子」というメーカーものを使用していたのが最大のウリだった。
つまりアーケードに忠実(リアル)だからリアルアーケード。ちなみに「Pro.」がついているのはおそらくそれ以前に『リアルアーケード』という名前を別のアケステに使ってしまっていたからだと思う。
その後HORIは、ボタンの配置を業務用と同様にした『リアルアーケードPro.2』、ボタンパーツにも三和電子製のもの採用した『リアルアーケードPro.2 SA』、当時は三和電子と並んで主流だった「セイミツ工業」のパーツを使用した『リアルアーケードPro.2 SE』などを発売していった。この時点でけっこうややこしい。
以降しばらくは、三和電子パーツ搭載RAPの名称にSA、セイミツ工業パーツ搭載RAPにSEがつくのが慣例となった。「SANWA」の「SA」、「SEIMITSU」の「SE」と覚えよう。ここ、テストに出ます。何の?
特に人気の高かった『リアルアーケードPro.2 SA』は、時代がすっかりPS3・Xbox360主流になった2012年にまさかの再販がなされたのだが、流石に現在は生産終了となっている。
また当時から、格闘ゲームとコラボした天板のデザイン違いのRAPが複数あった。いずれも基本的な仕様はRAPと同等だったが、鉄拳系統のものはアーケード準拠でボタン配置が微妙に異なっていた。詳しくは「ノアール配置」でググろう。
PS3・Xbox 360時代
リアルアーケードPro.3
PlayStation3で最初に出たRAPは2007年の『リアルアーケードPro.3』。その後「SA」と「SE」も登場。
また、特に『ストリートファイター4』の関係で需要が高かったXbox 360向けのRAPも作られた。2008年に『リアルアーケードPro.EX』。こちらもSAとSEが後から発売した。
ビュウリックス筐体再現モデル
リアルアーケードPro.V3 SA
「3」と「EX」はいずれも『リアルアーケードPro.2』とほぼ同じ筐体・ボタン配置を採用していた。これは当時主流だった「ブラスト筐体」というアーケード筐体がモチーフだった。
しかし2007年に出た「ビュウリックス筐体」がアーケードで徐々に主流になりはじめ、こちらをモチーフとしたRAPが登場。
それがPS3用の『リアルアーケードPro.V3 SA』とXbox360用の『リアルアーケードPro.VX SA』。「VEWLIX」だから「V」と覚えよう。覚えなくてもいいです。いずれも後に「SE」がラインナップに追加された
その後2017年現在まで、微妙に形を変えながら「Vシリーズ」のデザインは継承され続けている。
さらに幅・厚みまでビュウリックス筐体を忠実に再現した『リアルアーケードPro.3 Premium VLX(PS3)』と『リアルアーケードPro.EX Premium VLX(Xbox360)』も「VLXシリーズ」として初登場。そのあまりのデカさと3万円のお値段により「お三万コン」という愛称で一部に親しまれた。
またビュウリックスとは別の『ノアール筐体』のボタン配置を再現した『リアルアーケードPro.N3 SA』もこの頃登場。いわば「Nシリーズ」。主に鉄拳やガンダムとのコラボモデルが発売された。
ファイティングエッジとHORIオリジナルパーツ
ファイティングエッジ(Xbox360用・白モデル)
RAPからRAPVへ進化したHORIのアケステだが、2012年にRAPとは別の新たな流れが生まれた。RAPではないが重要なので紹介しておく。
その名は『ファイティングエッジ』。HORIが独自に開発したオリジナルパーツ「隼」レバーと「玄」ボタンを採用し、ボタンアサインなどの新機能を搭載。プロ格闘ゲーマーが監修したいわばお墨付きスティックである。
RAPシリーズのコンセプトであった「アーケードの再現」というコンセプトからの脱却を図った意欲作と言える。あとデザインもシャープで光るのがカッコイイ。
さらに2014年にはRAPとして初めて「隼」レバーと「玄」ボタン搭載した『リアルアーケードPro.V3 隼』も登場。オリジナルパーツの使用を更に推し進めていく。
またこの頃、無線接続が可能な『ワイヤレス リアルアーケード PRO.V3 SA』と隼・玄搭載『ワイヤレス リアルアーケード PRO.V3 隼』も発売されるが、接続の安定性に敏感な格ゲープレイヤーの評価はあまり芳しくなかった模様。
PS4時代
リアルアーケードPro.V4 隼
そして現行であるPS4世代。なおXbox One用のRAPも存在するが、ハード自体が日本ではほとんど売れてないので割愛する。
これ以降、三和電子やセイミツ工業といったアーケード同等パーツを使用したモデルは完全に姿を消し、全てのモデルがHORIオリジナルパーツ搭載となる。またそのオリジナルパーツも改良が重ねられている。
さらに通常モデルの他に静音モデルが併売されるようにもなった。レバーに光学式スイッチ、ボタンの内部に緩衝材を使用したもので、家族の冷たい目や隣人からの壁ドンに気兼ねせず夜中のプレイが可能に。親世代になった格闘ゲーマー達にも好評な模様。
まず2014年に発売されたのが「隼」レバーと「玄」ボタン搭載の『リアルアーケードPro.V4 隼』と静音の『リアルアーケードPro.V4 サイレント隼』。スペックはRAPV3隼とほぼ同様。
また「お三万コン」ことVLXシリーズの後継機『リアルアーケード Pro.4 PREMIUM VLX』もちゃんと(?)発売。
翌2015年には『リアルアーケードPro.V 隼』と静音の『リアルアーケードPro.V サイレント隼』が登場。タッチパッド搭載・筐体薄型化などの改良が施されている。名前から「4」が取れた形だが、ここからややこしさが加速していく。
2015年の年末に出た新モデルが『リアルアーケードPro.V HAYABUSA』と静音の『リアルアーケードPro.V サイレント HAYABUSA』。隼からHAYABUSAへ。
パーツが大幅に改良され、名称も「HAYABUSA」レバーと「HAYABUSA」ボタンに変更された。その後VLXシリーズに「HAYABUSA」レバー・ボタン搭載の『リアルアーケードPro. Premium VLX HAYABUSA 』も発売されたが、お値段は残念ながら(?)三万五千円に値上がり。
そして2016年末に出た現行機種が『リアルアーケードPro.V HAYABUSA(2017年モデル)』と静音の『リアルアーケードPro.V サイレント HAYABUSA(2017年モデル)』。
主な変更点はイヤホン・ヘッドセット端子が搭載されたこと。「2017モデル」という味気ない名称をつけたあたり、どうやら新しいネーミングは考案できなかった様子。
今年に入ってからはノアール配置のNシリーズ『リアルアーケードPro.N HAYABUSA』も登場。スペックは2017年モデルと同様。
また来年には待望のPS4対応『ファイティングエッジ』も発売予定。アルミ天板採用、レバー入力のアサイン機能搭載など、最先端(エッジ)モデルに相応しいスペック。
PS4用のラインナップを整理する
以上、RAPの歴史についてざっくりとまとめたが、PS4世代になってから新型iPhoneの如く毎年アップデートを重ねた結果、紛らわしいネーミングが増えてしまっている。
まず「Vシリーズ」が、
- 2014年:リアルアーケードPro.V4 隼
- 2015年:リアルアーケードPro.V 隼
- 2016年:リアルアーケードPro.V HAYABUSA
- 2017年(現行):リアルアーケードPro.V HAYABUSA(2017年モデル)
という流れで、かつそれぞれに静音モデルが存在している。
次に「VLXシリーズ」が、
- 2015年:リアルアーケードPro.4 Premium VLX
- 2016年(現行):リアルアーケードPro.Premium VLX HAYABUSA
そして、それらとは別系統として
- 2017年(現行):リアルアーケードPro.N HAYABUSA
- 2018年(発売予定):ファイティングエッジ
以上がRAP(とファイティングエッジ)のラインナップ。他に小型軽量モデルもあるが割愛。
個人的な要望を言えば、オリジナルパーツを使い始めた時点で「リアルアーケード」ではないのだから、何か独自の新しいネーミングを考えてナンバリングをしたほうがわかりやすくて一石二鳥な気がする。対は「ハヤブサスティックV5」にするとか。ちょっとダサいか。
ストリートファイターシリーズのアーケード撤退が物語るように、ここ数年のゲームセンター退潮の流れには歯止めがかかっておらず、アーケードスティックの需要も確実に減っているだろう。
新作格ゲーの中にも純正コントローラーでの操作を念頭に置いたものが増えてきている。『BLAZBLUE CROSS TAGBATTLE』は製作者がそれを公言していた。
自分も最近はパッド型コントローラープレイすることが増えているが、やっぱりアケステ操作は楽しいし、指先のみのパッドと違って腕などの大きい筋肉を使うので意外と疲れにくいというメリットもある。
そんなわけで今後もHORIさんには新型のアーケードスティックを作り続けてもらいたい。くれぐれもMad Catzの二の舞にはならないように。
出典:株式会社 HORI,トップページ - 家庭用アーケードスティックWiki - アットウィキ