装甲車を鹵獲するのがだるくなってきた。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/10/12
- メディア: 単行本
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村上春樹を読む。この人の文章にはもちろん数限り無い分析がなされているだろうが、僕の印象では、ものすごく個人的な感覚に基づいた表現が上手いと感じる。それも論理的・形而上的な考察から導かれる感覚、すなわち言葉遊びの類では無い。「生身で触れたことがらを上手く言葉に置き換えている」というような印象を読んだ人に与える。
現実には、僕らの考える事・感じることを統御するものこそ言葉であり、言葉抜きの認識は有り得ないと言ってよい。感じたことを言葉に置き換えているのではなく、言葉があるから感じることができるのだ。
にもかかわらず、村上春樹の無駄の無い乾いた文体と、無類であり卓越した比喩が僕に喚起するのは、言葉にし得ない感覚、「言葉にし得ない」という言葉でしか表し得ない感覚だ。そしてそれはこの世に於いて極めて類まれな現象である。チョー大げさに言えば奇跡。ミラコーであると言っていい。と、思う。