rh日和(仮)

モノ、ゲーム、PCなどについてのブログ。

バトルドーム小説

朝、気がかりな夢から覚めると、私はバトルドームになっていた。
全体がプラスチック製、正方形でドーム状のボディ。四隅に取り付けられたフリッパー付きのゴール。ドームの頂点はボールを供給するための受け皿になっている。どう見てもバトルドームだ。初期型の青いバトルドーム。
まず私は、自分の状況を把握しようと努めた。
なぜ私はこうして自分の体を見ることが可能なのか。
どうやら受け皿の中心を貫く円柱の先端、半球形の部位が私の顔であるらしい。360°回転して周囲を見渡すことが出来る。
ではここはどこなのか。見回したところ、部屋の中心、白いテーブルの上に私ことバトルドームが安置されている。周囲にはタンス、本棚、ドアがあるのが確認できる。
さらに、各所におもちゃのアイロン、水鉄砲、使い道の分からないパズルゲーム等が無造作に放置されている。どうやら子供部屋らしい。
では、なぜ私はバトルドームになってしまったのか。それが問題の根本でありテーゼである。
しかし、自分が自分である理由を本当に答えられる人間など存在するのだろうか。
例えば羊は、自分が羊である理由を考えたりするだろうか。あやしいものである。
もともと人間は、何の理由もなく羊になったりバトルドームになったりしているのではないか。
そして、単に自分が変身したことに気づいていないだけなのではないか。そんな気さえしてきた。
と、子ども用玩具にふさわしくないことを考えていると、まさしく子どもが四人、部屋に入ってきた。
私が意志を伝えようとする間もなく、一人の子どもが私の頭部、すなわち半球部分を回転させ、ゼンマイを巻きはじめた。バトルドームはゼンマイの動力によってボールを供給する、ピンボール式の玩具なのだ。
ゴールに残っていたボールを受け皿へと注ぎ始める子供達。ボールの黒と黄色は、私に危機を知らせていた。
そして、黄緑色の服を着た子どもが、スイッチオンと同時に最後のボールを注いだ。
やがて来るであろう惨劇がよぎり、戦慄が走る。
解き放たれたゼンマイが、ギィ、と不吉な音色を奏でる。
最初のボールがコトリ、とフィールドに落ちた。その刹那。
『バトルドーム!』
不意に私の頭の中で、謎のハイテンションヴォイスが炸裂した。
『ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!』
異様なまでに興奮した目つきで、一心不乱にフリッパーを動かし続ける子どもたち。
『超!エキサイティン!!』
ベルが鳴り、回転部がうなりを上げる。
『3Dアクションゲーム』
興奮が頂点に達し、思わずのけぞる子ども。
『バトルドーム』
…もはや我々は逃れられない。そう、誰も逃げることなど出来はしないのだ。
――――『ツクダオリジナルから』。
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