rh日和(仮)

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PSの名作RPG『ポポロクロイス物語』について語りたい

 先日書いた通り、プレイステーション用ソフト『ポポロクロイス物語』のゲームアーカイブスを数年ぶりに再プレイし始めたのだが、1章をクリアして1日置いた後、土曜日を利用して一気にクリアしてしまった。端的に言ってドハマりだった。

ポポロクロイス物語

ポポロクロイス物語

 初出は1996年のRPG。リアルタイムでプレイした時は幼さゆえに終盤の雪原地帯をクリアできず(「ひだるま」が強すぎてトラウマだった)家族がクリアするのを後ろで見ていた記憶。

 10年くらい前に2度目の再プレイでようやく自力クリアしたと思うのだが、まだブログを書き始める前だったので記録が残っていない。ちなみに用いたハードはPS2だったハズ。

 ドット絵の温かみあるグラフィック。古典的で王道なストーリー。随所に散りばめられたユーモア。生き生きしたキャラクター。大人から子供まで楽しめる絵本のような、未来に残したい作品だ。

 ポポロクロイス王国の王子ピエトロが、母サニアを救うために冒険するストーリー。

 母を、そして世界を救うために戦うピエトロ、そんな彼を時に献身的に助けるナルシア、少しマヌケだが勇敢な白騎士、悪ぶっているが実は義理人情に厚いガミガミ魔王。健気なピエトロと仲間たちの頑張りを応援したくなる。ラストは感動必至。

 細かい話をすると、主人公のピエトロ、父親のパウロの名はいずれもキリスト教の聖人に由来する名前。ピエトロはイタリア語圏、パウロは南米に多い。

 製作者がキリスト教徒なのかと思ったが、続編に出てくるピエトロの息子の名前が何のゆかりもないピノンなので、そういうわけでもなさそう。


 苦難続きなピエトロの冒険だが、やったことの結果だけを見ると、裏目に出ていることが多い。

 明確にプラスなのは、ガミガミ魔王から知恵の王冠を奪還、鉱山でのナグロ救出、ブリタニアの陸上墜落阻止、そしてラストの氷の魔王撃破といったあたり。

 一方で、闇の世界に行って帰ってくるまでの流れは、ほぼ敵である四天王に利用されっぱなし。ガミガミ魔王の飛行船を奪われ、ラダック仙人を倒され、あげくピエトロをかばうためにサニアがやられて氷の魔王の封印が解かれてしまう。ゆえに筋立て自体は結構ダーク。

 このため、「ピエトロがいなければ氷の魔王は復活しなかったのでは?」と思ってしまいがちであるが、しかしそれはハッキリ言って罠である。誰の?

 まずサニアは10年間氷の魔王を封印し続けるため力を使い続け弱っていた。ということはいずれ彼女が力尽きれば氷の魔王の封印は解けていた可能性が高い。それにもしピエトロが何もせずにいたとしても、いずれ四天王によって封印が解かれていただろう。

 そしてなにより、この手のファンタジー物語には「運命」という概念がつきものだ。全ては氷の魔王を倒すため、そしてピエトロ成長のための、いわば神の見えざる手の導きなのである。そーいえば続編の2にそういう神的存在がいたようないなかったような曖昧な記憶。


 ストーリーだけでなく、つくづくスゴイと感じるのが、町とその住人の作り込み。

 昔ながらの農耕牧畜に勤しむタキネン村*1

 まるでガミガミ魔王の幼児性がそのまま街になったようなガミガミシティは、皮肉なことに魔王本人がいなくなってからも発展を続けている。

 鉱山の町ゴドリフに公衆浴場があるというリアリティ。現実世界でも、鉱山労働者が利用するための浴場は必須だったという。

 そのゴドリフと港町パーセラの間には貨物輸送用のトロッコが走っている。

 パーセラには最新式の鍛冶屋があり、そのせいでゴドリフにある職人気質の鍛冶屋の仕事が無くなってしまっていたり。

 他にも変わり者だらけのカナリシアや、遭難した人達が楽しく暮らす流され島、高山の麓のハタハタ村など、「キャラが立っている」ならぬ「町が立っている」。『MOTHER2』などにも通じる作り込みとユーモアセンスを感じる。

 そんな中で一番すごいと思ったのが、ポポロクロイス城下町にいる猫を飼っているおばあさん。

 本作のNPCは、そのほとんどがストーリーの進行に合わせてセリフが変化する。昔ながらのRPGならではの細かい作り込みで、NPCに話して回るだけでも楽しい。

 しかしなんとこのおばあさん、はじめから終わりまでほとんど同じセリフしか話さないのである。最も頻繁に行き来する城下町に住んでいるにも関わらず、王子であるピエトロに「どなたでしたっけ?」と言うか、もしくは寝息を立てて眠っているだけ。終盤で王妃サニアを後ろに連れていてさえ「どなたでしたっけ?」。

 このリアリティ。限られた容量でご年配者特有の「変わらなさ」を表現する創意工夫が伺える。特に城下町にいる他のNPCはよくセリフが変わるため、この「変わらなさ」が際立っている。あまりに変わらないので実はこのおばあさんが隠しダンジョンかなにかのカギを握っているのではないか? などと疑いたくなるが、今のところそんな噂は出ていない模様。


 RPGとしてのゲーム性に関して言えば、よく言われるように難易度は高め。

 序盤のザコ敵はナルシアのホーリーバーストで楽勝なのだが、ストーリーが進むにつれてモンスターの体力が増えてくる。

 終盤はモンスターからの攻撃も激しくなってくるので、装備で防御を固めることが重要になってくる。特に後衛にも飛んでくる魔法攻撃は対策が必須。

 全属性を半減する防具「てんしのまもり」がかなり強力なのだが、アイテム説明欄を見てもイマイチ効果がわかりにくく、初プレイ時は気づかなかったと思う。もし装備画面に属性耐性値が表示されていたらわかりやすかったんだけど。

 ボス戦もかなりハードで、他のRPGのようにただレベルを上げるだけではなかなか突破できないだろう。キチンと対策を立てる必要がある。ボス戦前のセーブなどもほぼ無いため、今で言う「初見殺し」に近い。

 味方全体を毒にしてくるリッカーは憎たらしいビジュアルも相まって非常に嫌らしいボス。こいつもトラウマ。

 終盤のボスは全体攻撃を連発してくるが、こちらの全体回復手段はナルシア・カイの魔法を除けばアイテムのみ。ゆえに回復アイテムを大量に持ち込む物量作戦が最もラクな攻略法になってしまう。

 続編である2のイージーさから考えると、難易度調整のミスなのではないかと疑いたくなるが、ストーリーがハードになるにつれて難易度が上がっていく流れが没入感を生んでおり、クリアしたときのカタルシスに繋がっている面もあるので、一概に悪いとは言い切れない。

 それとラスボスが急にマッチョな巨人像みたいになる理由が正直よくわからない。急に謎の空間に飛ばされる流れも含めて、リアルタイムで見た頃からあまり印象に残っていない。超巨大な敵とピエトロ達を戦わせるための苦肉の策だったのだろうか。


 デモシーンで時折挟まるアニメーションはジブリチックで結構クオリティが高い。ブリタニアの設定も若干ラピュタっぽいが、そもそも「空を飛ぶ島」自体、他に元ネタがある。

 惜しむらくは当時メディアがCDだったため、画質が悪く時間も短いということ。アニメ部分のクオリティアップのためだけでもいいので、リメイクして欲しい。

 そう言えば当時TVアニメも放送していたが、オリジナル展開や暗い話が多くて見るのをやめてしまった記憶。

 また声優が大変に豪華で、ピエトロ(高山みなみ)、ナルシア(三石琴乃)、白騎士(池田秀一)、ガミガミ魔王(大塚明夫)、ナレーション(井上喜久子)と超一流揃い。喋るのは戦闘とアニメーションだけだが。当時のプレステのゲームは声優が豪華なものが多かった印象。武蔵伝とかも。

 次回作以降でガミガミ魔王以外はキャスト交代してしまったが、交代前後で違和感が無いのもさすがプロの仕事。特にピエトロやナルシアは1の見た目通り幼い声と、2以降の成長した姿の声がいずれもマッチしていると思う。


 本作の後に出たのが『ポポローグ』。外伝的な内容でストーリーの本筋との関わりは薄い。ただ父親であるパウロの過去が掘り下げられたりと、世界観を知る上では重要な作品だった。

ポポローグ

ポポローグ

 そしてその次に出たのがPS世代の完結編『ポポロクロイス物語Ⅱ』。自分がゲームで感動を覚えたのはこの作品のラストが初めてだったと思う。


 せっかくなので両方再プレイしたいところだが、さすがに時間がかかりそう。ポポローグを飛ばして2をやろうかなー。名作はいつ遊んでも楽しい。

*1:先日プレイしたスマホゲーでピエトロがその名前を読み上げるまでずっと「タネキン村」だと思いこんでいた