rh日和(仮)

モノ、ゲーム、PCなどについてのブログ。

FF8スマホ版が配信開始したので「ジャンクション」とは何か? について改めて考える

ファイナルファンタジーⅧ

 『ファイナルファンタジー8』のスマホ版が出たので、今一度FF8について考えてみたい。以前新リマスターが発表された時も記事を書いている。

rhbiyori.hatenadiary.jp

 FF8の良さとは何か? と聞かれて最初に答えるとしたら「ストーリーの奥深さ」を1番に推したい。

 学園物であり恋愛物であることから本作を遠ざけている人もいるかもしれないが、1度そういった色眼鏡を外してプレイしていただきたい。何かしら心に残るものがあるハズ。

 ストーリーの軸となるのは主人公スコールの成長。彼がリノアと出会い、仲間たちに助けられながら、魔女と戦う。

 お互いに未成熟なスコールとリノアが、お互いを思いあうことによって、困難に立ち向かう力を得る、王道ストーリーが展開される。なんか書いてて恥ずかしくなってきましたけど、ええ。

 彼らだけでなく、パーティーメンバー6人全員が何らかの葛藤を抱えながら成長しようともがく。いわば青春群像劇。みんなかわいいので応援したくなってくる。


 FF7から進化した、さらにリアルなグラフィック、さらにリアルな頭身によって、キャラの外見やモーションをより詳細に描けるようになった。

 だからこそ逆説的により詳細にキャラの内面を描けるようになったのも本作の大きな特徴だろう。

 FF7が3Dグラフィックを用いた重厚なストーリーをゲームに導入したことと並び称されるべき、ゲームにおける革命の1つだと見なしている。もっと評価されるべき。

 もちろん8以前のFFも多様な人間ドラマがウリだったのは間違いない。でもドット絵や3頭身ポリゴンではスコールやリノアのような「子どもと大人のはざまで揺れる」複雑な人物描写はちょっと難しかったと思う。

 スコールの豊富なモノローグや、スコール一行がラグナたちに「ジャンクション」する描写は、FF8の8頭身グラフィック無しではあり得なかっただろう。


 だからこそ、独特すぎるゲームシステムによって人を選ぶゲームになってしまったのは惜しいところ。

 全体を理解すれば、(人によっては)やりごたえのあるシステムだと感じられるハズなんだけど、そこに至るまでの導線がゲーム内に乏しすぎる。

 ごくフツーにゲームをプレイした人は「敵から魔法をドローし続けるめんどくさいゲーム」だと思ってしまうだろう。実際は「アイテムを集めて魔法を精製する」のが一番重要で、そのためにカードゲームを活用したりするのが楽しいんだけど。


 ゲームシステムであり、ストーリーとも絡んでくる「ジャンクション」とは一体なんなのか? について考える。

 ジャンクションとは直訳すれば「接合」であり。これはかなり大雑把に言えば、「人と人との繋がり」のメタファーであると言っていいんじゃないかと思う。

 ガンダムシリーズにおけるニュータイプの精神感応のような。あるいはエヴァンゲリオンにおけるATフィールドの逆、というか。

 接合とよく似た日本語に「接続」がある。英語にすれば「コネクト」。

f:id:rhbiyori:20210330113312p:plain
 おそらく英語では、点と点を線で繋ぐようなイメージの単語が「コネクト(接続)」で*1、で、複数の線が交わったり束ねられたりするのが「ジャンクション(接合)」なのだろう。

 個と個、あるいは複数の個がただ繋がるのではなく、個が持つ人生という線的な時間の流れが、時に交わり、時に重なり、そして時に離れていく。そういった様を描こうとしたのがFF8なのかもしれない。

 「いや物語って大体そういうもんでしょ」と思うかもしれない。しかしFF8ならではの要素もある。

 FF8ではメインストーリーに絡まない、いわゆるモブキャラクターが、ストーリーの進行に合わせて変化していく様子がかなり多く描かれている(「今だからこそFF8」より)。これも線的な時間の流れを表現していると言える。

geolog.mydns.jp

 エルオーネは人間の意識を過去の人間にジャンクションさせることができる。そこでスコールはジャンクションを通じて、彼の人生において非常に重要な出会いと別れを目撃することとなる。ところで自分の○○の恋愛遍歴を見せられるのってリアルに考えると結構シンドいと思うんだけど、自分だけだろうか。

 そして何より、ラスボスの最終目標は「全ての時間の流れを無にすること」。つまりこれは、人との繋がりとしての「ジャンクション」の否定であり、これにスコールたちは抗っていくのである。

 ジャンクションという概念が、システム、そしてストーリーをも貫くテーマであることが、多少なりともわかっていただけるだろうか。まぁプレイヤーからしたらG.F.をジャンクションし直したりするのがスゲーめんどくさいんだけどね。


 「所有すること」は物質が目に見えるのでわかりやすい。でも「繋がり」は目に見えないからわかりにくい。ジャンクションを中心に据えたことが、結果的にFF8のわかりにくさの原因になってしまったのかもしれない。

 例えばFF6では魔石というアイテムを入手することで召喚獣を使役できるようになる。手に入れたから、使える。わかりやすい。

 でもFF8では「G.F.をジャンクション」だ。そもそも具体的にスコールがどんなことをやっているのか、視覚的に表現されることもない。

 おそらくFF8の世界あるいは異世界(幻獣界みたいなところ)にG.F.という存在が居て、その存在と繋がることで一時的に力を引き出すのが「ジャンクション」なんだと思う。多分。アルティマニアにもそう書いてあるらしい。

 でも「あえて困難な表現に挑む」ってところがいかにもFFらしい。その挑戦がたまに裏目に出ることもあるが、まぁそれはそれとして。

*1:スティーブ・ジョブズが「点と点を繋ぐ(to connect the dots)と言っていたので