最近は『ドラゴンクエストV』の実況配信を見たりしている。
ドラクエ5のことを考えるたびに、デボラって「イイ」な、と思う。
ゲーム攻略的な話をするとデボラは他の花嫁候補と違う物理アタッカーなのでゲームシステムともっとも噛み合っている。しかしそういう攻略の話を抜きにして、単純に一人のキャラクターとして「イイ」んじゃないかと。
ところで以前「そもそも2人(ニンテンドーDS版からで増えたデボラを加えて3人)の女性を並べて『この中から奥さんを選びなさい』って現代の倫理観としてアリなのか?」という意見を見かけた。確かに一理ある。選ばれなかった側にとってこれほど残酷な話は無い。
ただストーリー上の盛り上がりやわかりやすさを作るためのイベントとして花嫁選びが必要だったのかなとも思う。スーファミ時代のRPGで細々とした自由恋愛描写を入れるわけにもいかないだろう。ゲームジャンルが変わってしまうし。
話を戻そう。デボラの何がイイのか。
まず主人公に対してのアプローチをかけてくる。これが大きなポイント。
そのアプローチの仕方は「あんた小魚みたいな顔してるわね」「小魚は体にいいからキライじゃない」「しょうがないからあんたと結婚してあげる」という、彼女らしいツンデレを超えたなにかとしか言いようのない言い回しではあるのだけれども。
他の花嫁候補を見てみると、ビアンカは「フローラさんと結婚したほうがあなたのためだし…」的なことを言うし、フローラも「もしかして〇〇さん(主人公)はビアンカさんのことが好きなのでは?」と自ら身を引くような態度を取る。
なぜ二人がこのような慎ましやかな態度を取るのかといえば、それは「女は三歩下がって男の後ろを歩く」というような旧来的な価値観ゆえだろう。グイグイ男に迫る女性はあまり好ましく思われなかったし、相手のことを思って身を引くいじらしさが「女性らしい」と捉えられていた。
しかしデボラは違う。唯一「主人公のことが好き」「結婚したい」と(非常に遠回しな言い方ながら)直接伝えてくる。自分の意見が言える人なのである。
古いゲームが古い価値観に基づいて作られていることにどうこう言っても仕方ない。2008年に発売されたDS版でデボラのような一見すると「肉食系女子(この言葉が流行り始めたのも2008年頃らしい)」を追加したのは、そこへの反省だったのか、あるいは単に今までの花嫁候補と違う変化球を狙ったのか。
ただしデボラに関しても「ツン」という殻で「デレ」を隠しているという点である種の奥ゆかしさを備えていると言える。
もう一点、それぞれの花嫁候補と結婚しなかった場合を見てみると、デボラの自立心の高さが感じられる、ような気がする。
実際のところデボラに関しては描写がかなり少ないので、結婚しなかった場合にどのような暮らしを送っているのかほとんどわからない。
ただ他の花嫁候補を見てみると、寂しげに山奥の村で暮らすビアンカ、アンディと結婚するフローラと比べると、デボラに関しては特に今までと変わりのない気ままな暮らしをしているような印象がある。
自分が居なくてもこの人は生きていけるだろうな、という雰囲気がそこはかとなく漂っているのが彼女の魅力といえる。
デボラが発表された時は「堀井雄二が自分のギャル趣味を入れてきた」などと叩かれていた印象がある。ドラクエ9のサンディとセットで。
ドラクエにわざわざ毎作欠かさずカジノを実装していることを考えると、個人的な趣味というよりも、顧客のニーズを予測した結果なのではないだろうか。その後発売されたドラクエ11の、実にファンタジー然としたパーティーメンバーを見るかぎり、その方向性は取りやめになったものと思われる。
しかしことデボラに関して言えば、扇情的な見た目とは違い、軽薄な面や男に媚びるような態度は取らない。ただ単に、ツンデレという言葉だけでは言い表せないほど言動がドギツイだけで。人を見た目だけで判断してはいけない、ということも僕らに教えてくれている。