rh日和(仮)

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グラブル日記 「拝啓、大切な君へ」の感想 ぼんやりとした焦点の定まらないストーリー

GRANBLUE FANTASY グランブルーファンタジー GRAPHIC ARCHIVE VIII EXTRA WORKS

 ここ2年くらいの『グランブルーファンタジー』のストーリーはよくできていると感じていた。

 細かい部分はどうあれ、ストーリーの山場や起承転結といったものがキチンと作られていたから。


 しかし今回のシナリオイベント『拝啓、大切な君へ』は微妙な評価だった。

 現代パートだけを見ればストーリーの体裁は一応整っていた。

 困難を乗り越えて大切な人に会いにいく、という大筋のストーリーがあったから。

 しかしラストがぶつ切りの夢オチだったことで全てがうやむやになってしまった。

 積み上げた起承転結がほとんど無意味になってしまい、全体としてカタルシスの薄い、スッキリしない印象だけが残ってしまった。



 同じような夢オチストーリーとしてウマ娘コラボイベントがあった。

 あちらもラストはややフワッとしていたが、何かが解決したような「手ざわり」を示すことで爽やかな余韻が演出されていた。

 なにより途中のエピソードがバラエティに富んでいて楽しめたのがウマ娘コラボイベントの美点だった。



 「拝啓」にはそのような美点もあまり見当たらなかった。

 揺れ動く未来(ジータ)の心情が微細に描かれるシーンは良かった。トカゲのビーもインパクトがあった。

 しかし良かった点はそれくらいで、あとは既存の青春ものをなぞったような、良くも悪くも普通の話でしかなかった。

 なにより、普通にストーリーを読むだけだと本当に完全な夢オチで、後に何も残らないように読めてしまうのがよくなかった。

 このオチだったら「夢を通して現実にいる人の大切さに気づく」というようなテーマで終わらせるのが無難だったと思うが、そういう描写も弱かった。

 実は気づきにくい伏線らしきものひとつあり、それが今後のストーリーにも影響する可能性はありそうなんだけどあまりにもさりげなさ過ぎてただ読んでいるだけだと気づかない人の方が多いと思う。空虚な後味とすら言いたくなる。



 キャラクター描写に納得がいかない人の意見もネット上で見受けられる。

 個人的には別世界という設定なのでキャラがどうなっていてもあまり気にならないのだけれど、キャラ愛が強い人はそうもいかないだろう。

 特にベリアルのストーリー上の振る舞いに納得がいっていない人が多く、ただの意地が悪い不良にしか見えないという意見が多い。

 悪役を魅力的に描くためには、たとえそれが倫理的に間違っていたとしても己の信念や美学を貫こうとする態度が必要。

 元々のベリアルは「破壊的快楽主義者」であり、「巨悪を成そうとするルシファーに心酔している」という部分に魅力があった。

 今回のベリアルは「ただ暴力的なだけ」「ルシファーが小物なので相対的にベリアルもしょぼく見える」というマイナスな印象しか残らなかった。

 狡知なのだからもうちょっと精神的な嫌がらせをすべきだったのではないか。



 舞台を現代の学園ものに移すという手法は、二次創作や公式パロディでよくあるものだ。

 その面白みは「もしこのキャラが現代の学園にいたらどんなポジションや役割になるだろう」と妄想しそれを積み重ねていくことにある。

 その点でいうと今回のイベントは、シリアスなストーリーに重点が置かれていたためパロディの面白さはあまり味わえなかった。期待していたユーザーは肩透かしを食らっただろう。

 そもそもパロディをやるにはキャラ数が少な過ぎた。立ち絵を描く労力の問題もあったのだろう。ミリンやシオンらしき女生徒は顔に影がかかっていたし。



 あえて現代を舞台にしたのは現在開催中のグラブルミュージアムと連携した展開を予定していたからかもしれない。

 それが途中で頓挫したせいで、このような焦点の定まらないぼんやりしたストーリーになったとしたら、納得はできないが理解はできる。

 個人的に今回のイベントに対してそれほどの嫌悪感は無い。どちらかというと虚無感と言った方が近い。次回はもうちょっと読み応えのあるストーリーを期待したい。