引き続き、『ストリートファイター6』が流行りそうな予感がしている。
最大の理由は、身も蓋もない言い方をすればカプコンが宣伝に気合を入れているからではある。
紅白歌合戦に篠原涼子が出演しスト6の主題歌を歌ったり、新情報を告知する公式Web番組にグラミー賞受賞のラッパー、リル・ウェインを呼ぶなど。日本だけでなく世界で流行らせようという気概を感じる。
しかしただ宣伝にカネをかけているだけでなく、ゲーム内容の方も前評判は高く、クローズドβテストの評価も上々。これは期待できる。
格闘ゲームにアケコンは必須ではない
格闘ゲームの実況配信などを見ていると、本当によく見かけるコメントが「格闘ゲームにアケコンは必要ですか?」という質問。
誇張抜きで1000回くらい見た質問。なにせ長年配信を見ているので。
昔ながらのゲーマーほど「格闘ゲームはアケコンが有利」というイメージがあるだろう。プロゲーマーも使っているし。
しかし結論から言えば、これから格闘ゲームを始めるのにアーケードコントローラーは必須ではない。
なぜなら最近の格闘ゲームは様々なコントローラーでのプレイを想定して作られており、デバイスによる有利不利が出にくいように設計されているから。
ストリートファイター6にはコマンド無しで必殺技を出せる「モダンモード」が搭載されており、ますます操作の簡略化が進んでいる。
昨今のプレイヤー間の通説だとレバーレスコントローラー(レバーの代わりにボタンで移動操作を行うアケコン)が「理論上最強」と言われているが、世界大会の結果を見ると、パッド、アケコン、レバーレスのプレイヤーがおおよそ同程度の結果を残している。
もしコントローラーの性能差が勝敗を大きく左右するのであれば、プロプレイヤーの使用コントローラーはいずれかに偏っているハズ。現状そうなっていないことが、性能差の小ささの証だろう。
自分もここ5年くらいパッドで格闘ゲームをプレイしているが、それで不便を感じたことは無い。ボタンホールドなど特殊な操作が必要なキャラを使ってこなかったというのもあるが、それもボタン配置の工夫などで対応できると考えている。
なのでこれから格闘ゲームを始めようという人は、自分が慣れているデバイス、あるいは手元にあるデバイスを使ってプレイすれば問題ない。もしどうしても他のものを使いたくなったら、その時に改めて乗り換えればいい。
以下、様々な格闘ゲーム用デバイスについての知っている限りの所見を述べる。
なお自分はレバーレスの使用経験は無いので、その辺を含めて読んでいただきたい。
パッド型コントローラー
PS5、Xboxなどに付属しているタイプの、いわゆるコントローラー。「ゲームパッド」「パッド」と呼ぶこともある。両手で持つ操作方法で、方向キー、アナログスティックなどを備えている。普及率が高く入手性もいい。ゲームハードを買えばついてくるし、家電量販店や通販などですぐ買えるのが最大のメリット。
操作性の面では、正確なコマンド入力に若干難があるとされる(個人差あり)のと、ボタンを押す右手の自由度が低いのがデメリット。
しかし最近の格闘ゲームタイトルはコマンドやボタン操作が簡略化されているので、パッドが大きく不利になる場面はまず無い。大会使用実績の高さがそれを証明している。
メリットとして、LRボタン・LRトリガーに常に指を乗せておけるため、とっさに押せるボタンをアケコンなどより多くできる。高級モデルだとさらに背面ボタンを搭載しているものもある。
移動に方向キーとアナログスティックどちらを使うかは、人によって分かれる。某プロプレイヤーがTwitterで行ったアンケートによると「方向キー派75%」「アナログスティック派25%」だった。普段はスティックでダッシュ入力だけ方向キー、というように状況に応じて両方を使い分けるスタイルもある。
アケコンなどと比べて操作音は非常に静か。夜間にプレイして壁ドンされる心配なども無い。
耐久性は基本的にアケコンなどに劣る。ボタン内部のパーツであるシリコンゴムが劣化しやすいため。耐久力の高めるためにマイクロスイッチを内蔵したり、パーツ交換に対応したコントローラーもあるが、高価。
長時間プレイすると左手の親指が痛くなる、という人もいるが、操作に慣れて余計な力が入らなくなれば問題なくなるハズ。
自分も5年以上パッドプレイヤーだがいくら長時間プレイしても平気。アケコンも所有しているが全く使わなくなった。壊れたパッドのシリコンゴムを接着剤で修理したりもしている。
アーケードコントローラー
左にレバー、右にボタンが配置された、箱型のコントローラー。個人的にはアーケードスティック、アケステと呼ぶ方が好きなんだけど最近はアケコンと言う人がほとんどで少し寂しい。スティック(レバー)がついてることが伝わりやすくて便利だと思うんだけど。元々はゲームセンターの格闘ゲーム用筐体(ゲーム機)の操作部分を模して作られたもの。つまりゲーセンの操作性を家庭で再現するためのデバイス。
なので必ずしも操作性を高めるためのデバイスではない、と個人的には考えている。
レバーによる精密なコマンド入力と、右手のボタン操作の自由度の高さがメリット。
ただコマンドに関しては、パッドの項目で書いた通り、昨今は簡易化されているためあまりメリットになっていない。
レバーは構造的にストローク(物理的な移動距離)が長く、操作速度に難があるとされるのが昨今の通説。
そのストローク問題を解消するため、構造的な「遊び」を少なくするためのカスタマイズパーツなども存在する。自分はあまり詳しくないので「アケコン カスタムパーツ」などで各自調べていただきたい。
また、ある意味で、その欠点を解消すべく考案されたのが後述する「レバーレス」だとも言える。
業務用パーツやメカニカルキーボード用のスイッチを用いたアケコンは耐久性が非常に高く、ちょっとやそっとでは壊れない。知識とやる気があればパーツ交換による保守も可能で、衝撃などの外部的な要因が無ければ基本的に壊れること無く使い続けられる。
長期的に操作性を保つためにはレバーのグリス塗りや清掃などが必要だが、それでもパッドよりははるかに寿命が長い。
操作音がかなり大きいのがデメリット。静音モデルや静音パーツもあるが、物理的なサイズのせいでパッドより静音になることは基本的に無い。
サイズの問題で持ち運びにも苦労する。家でプレイするぶんには問題ないが、アケコンで大会に出場する選手は、常々「重さ数kgの大きい箱」を運ぶ苦労を口にしている。
年々価格が上昇しており、近年は2万5千円~3万円ほどのモデルがスタンダードになっている。ちょっとした格安スマホくらいの価格帯。気軽に試せるとはちょっと言い難い。
レバーレスコントローラー
アーケードコントローラーのレバーを無くし、代わりに上下左右4方向に対応したボタンを配置したもの。以前はほぼ唯一の市販品だった製品名の「ヒットボックス」と呼ばれることが多かったが、ここ最近は一般名詞であるレバーレスと呼ばれることが多い。入力速度が遅いというレバーの欠点を解消しており、「理論上最強」と目されることもある。特に前or後ろ2回入力を2本の指で行うことで非常に早くダッシュを出せるのがレバーレスならではの強み。
ただ操作性が独特でパッド、アケコンに慣れた人が移行するのはなかなか難しいらしい。某プロプレイヤーはピアノ演奏の経験があったためレバーレスの習熟が早かった、と語っている。キーボードでのFPS経験がある人はWASD移動に似ているため慣れやすいかもしれない。
最大の欠点は入手の困難さ。現状だとおそらく国内に一般流通している製品が存在せず、輸入や個人制作に頼るしかない。今のところ唯一の国内流通予定なのが『Victrix』というメーカーのモデル。
またレギュレーションや規約が統一されていないという問題もある。つい先日、カプコン公式大会で「上下同時押しの上優先禁止」というルールが追加された。細かい説明は省くが、現在もルールの整備途上なのである。
上記はあくまで大会におけるルールであり、オンライン対戦などでは動作する限りどのようなデバイスでも使えてしまう。一人でプレイする場合は何も問題ないが、例えば個人主催の大会などに出る場合はルールに注意する必要がある。
総じて「ハードルの高いデバイス」になっているのが現状。もしもカプコン公認レバーレス、みたいなものが国内メーカーから出れば安心して使える環境が出来るのだけれど。
耐久性の高さはアケコン同様。静音性は、パッドほど静かではないが、レバーが無いためアケコンよりは静か。
アケコンのようなカスタマイズも可能で、特にボタンストロークを短くし操作速度を上げる改造がよく行われている模様。やはりあまり詳しくないので各自調べてください。
レバーがない分、筐体が横にズレる要因が無いため、薄型軽量のモデルも存在するのはレバーレスならではの長所。海外製の個人制作品の中にはギリギリポケットに入るサイズのものもある。
流通の少なさから価格はアケコン以上。中国製などの安価なモデルもあるが、その場合購入・使用の自己責任の度合いが高まる。
キーボード
PC版の格闘ゲームは、PC用のキーボードでの操作も可能。現状だと使用率はあまり高くないが、単に格闘ゲームをキーボードで始めるプレイヤーがこれまで少なかっただけで、操作性はレバーレスコントローラーに似ており目立った欠点は無い。
逆に言うと、キー(ボタン)が小さい、キー押し込みのストロークが長いなど、レバーレスと比べた長所が少なくいわゆる「下位互換」に近くなってしまうが、見方を変えればキーボードに慣れればレバーレスにスムーズに乗り換えられる、ということでもある。
現状ではPS4、PS5などの家庭用機の使用が不可能なのが最大の注意点。当然家庭用ハードを使用した大会などにも出場不可能。
またPCに2台同時に接続するとどちらもプレイヤー1として認識されるらしく、オフライン対戦でどちらもキーボードプレイヤーだった場合に問題が起こる模様。
入手性の高さはパッド以上で、ゲーミングキーボードの存在もあり、どこでも購入可能かつ種類も非常に豊富。価格もピンキリ。キーストロークや作動点など性能差があるが、使用人口の少なさによりどんなものが格闘ゲームに適しているかは未知数。ぜひ探してみて欲しい。そしてみんなに教えて欲しい。
安価なキーボードは同時押しの最大数に上限があるため注意。このあたりの事情も他のPCゲームと同じ。
変わり種、自作コントローラー
世の中には格闘ゲーム用でないコントローラーを使ったり、自分の使いやすいコントローラーを自作する人もいる。
自分が知る限りだとギターゲーム用コントローラーで大会に出場したり、楽器のキーボードをゲーム用に改造したりした人がいる。
手や指への負担が少ないエルゴノミックデザインのものを自作する人もおり、プロゲーマーのときど選手が「Ergobox」として動画で紹介している。
ただし特定の入力をプログラミングしたコントローラーなどを使用するとチートとみなされ、オンライン対戦でBANされる危険がある。
レバーレスの項目で書いたように大会ルールでコントローラーのレギュレーションが規定されている場合があり、同じ操作のボタンを複数個配置することが禁じられていたりする。自作だから何をやってもいいわけではない。
オンライン対戦ならある程度の「工夫」をしてもルール上はセーフではあるが、できればフェアネス精神に則ったコントローラーを使ってほしいと個人的には思っている。