思考だだ漏れノートG

モノ、ゲーム、PCなどについてのブログ。

『人喰いの大鷲トリコ』をプレイ&クリアした感想

 PS4ソフト『人喰いの大鷲トリコ』をクリアしたので感想を書きたいと思う。ちなみに本作、今月27日まで東京ゲームショウ関連セールでダウンロード版が割引中。

 『ICO』や『ワンダと巨像』で知られる上田文人氏が手掛けたゲームであり、発表から発売まで実に7年を要した、という事前知識だけを持ち合わせていた自分。『ICO』『ワンダ』も未プレイでやり始めた。

 で、結論を言うと大ハマリ。こーいう雰囲気のあるゲームは大抵好きになるだろうと予想していたのだが、その通りになった。

 こーいうってどーいう雰囲気かというと、他のゲームで例えるなら『Portal』や『LIMBO』のような「多くを語らない」感じ。ストーリーを黙示する感じ。あと謎を解きながら一本道を進んでいく感じ。あくまで個人的な印象だけども。


 プレイヤーが操る少年と、1匹の巨大な怪物「トリコ」が力を合わせて遺跡からの脱出を目指す、というのが大まかなゲーム内容。

 鳥のようなクチバシと羽毛に、猫のような耳や尻尾を持つトリコは、その動作も実際の動物のようにリアル。当然人間の言葉は理解しないので、あの手この手でコミュニケーションを図らなければならない。

 例えばそこら辺にある「エサ」の入った樽を与える、こちらへ呼ぶ、体をなでる、等。ゲームを進めればある程度意思疎通の手段は増えるのものの、なにせ相手は怪物。いずれにせよなかなかスムーズにはいかない。

 しかし少年ひとりで荒廃した巨大な遺跡を進んでいくことは不可能なので、どうにかトリコと力を合わせねばならず、そこにゲーム性が生まれている。


 ゲームコンセプト自体はそこまで目新しいわけではなく、プレイヤーキャラとAIで動くキャラを同時に動かして攻略するゲームは以前にもあったと思う。

 またヒットポイント・装備・レベルアップといった要素をことごとく排除してるので、いわゆる「ゲーム性」が豊かとは言えないだろう。

 しかし本作は圧倒的なビジュアルと世界観、リアルなモーションなどを作り込むことで、かつてないプレイ体験を実現している。

 シンプルなゲーム性と徹底的に作り込まれたビジュアルが見事に合致しているため、まるで映画をプレイしているみたいでのめりこんでしまうのである。

 例えば遺跡の「遺跡感」。古い木の足場、崩れる石壁、巨大な鎖の擦れ合う音、風に揺れるツタ、そして謎の遺物。全てが実在感を持って退廃的で荘厳な雰囲気を醸している。

 そしてなによりトリコの「トリコ感」。最初は巨大で恐ろしいが、少年になつくに連れて可愛く見えてくる。くりっとした瞳、もふもふとした羽毛、足で頭を掻いたり喉をゴロゴロ言わせたりと猫っぽい所作。もはや愛玩動物レベル。家に入れるにはデカすぎるけども。

 他にも足場から足場へ飛び移るトリコの重量感だとか、遺跡に差し込む光が作るコントラストだとか、とにかく全てのシーンが細部に至るまで印象的でアーティスティック。

 謎を散りばめつつプレイヤーの想像に委ねるストーリーテリングも実に良い。ほとんど言葉が登場しないのに、ラストにはそこはかとない感動が押し寄せてくる。


 一方でさまざまなレビューで指摘されているとおり、プレイしていてストレスを感じる部分も確かにある。

 自分が最も感じたのは、昨今のゲームに比べてアクション性がシビア過ぎるという点。より詳しく言うと、プレイヤーを補助する機能が乏しい。

 例えば少年を操作して足場から足場へ飛び移る場合、今時のゲームなら壁際に立ってボタンを押すだけである程度自動的に足場に飛んでくれる。

 しかしこのゲームでは、ちょっと距離が足りないだけで、あるいはちょっと方向を間違えるだけで地面へ真っ逆さま。すぐにリトライできるのはいいのだが、「リトライさせるくらいなら落ちないようにしよう」というのが最近のゲームの風潮なのではないかと思う。

 またトリコのエサの樽を足場から足場へ投げて進まなければならない場面が出てくるのだが、ここでも同様に距離や方向の微妙な調整が求められる。ここは失敗したら最初からなのでよりストレスが大きい。

 しかも少年が投げるモーションをしている最中にカメラが自動移動して投げる方向が変わってしまう、なんてこともある。このときはさすがにゲームでは久しぶりの憤怒を覚えた。


 ただこういった「痒いところに手が届かない」感じは、我々が生活する現実世界のそれに近いものがあるため、一概にダメな部分とはいい切れない。

 個人的な話をすると、実は先日来1匹の野良猫が庭に住み着き始め、最近では家に上がるなど飼い猫化の一途を辿っているのだが、現実の猫はトリコの比ではないほど思い通りにならない。足を拭こうとしても逃げていくし、エサも気に入ったものばかり食べる。

 そんなリアルなムズ痒さが苦労して攻略できた時の達成感と、少年・トリコ間の絆感、ひいてはストーリー的な感動を生んでいる側面が間違いなくあるだろう。


 もうひとつ言うならば、そもそも「一本道の謎解きアドベンチャー」というゲームジャンル自体、昨今主流の自由度が高いオープンワールド系と比べて、いわゆる超大作と呼ばれる規模のタイトルのなかではかなり珍しく、ありていに言って古さを感じなくはない。

 一応本作もマップ自体は(多分)シームレスのようなのだが、ゲームの進行そのものは分岐の無い一本道になっている、と思う。自分の見落としでなければ。

 最初に挙げた『Portal』や『LIMBO』も「一本道の謎解きアドベンチャー」ではあるが、いずれもインディーズレベルの低予算タイトルである。

 上記の操作性の点も含めて、開発に時間がかかったせいでコンセプトが古いままなのかな、と思ってしまうが、仮に開発7年という情報を知らずにプレイして同じような感想を持ったかどうかは微妙なところ。


 色々今時のゲームと比較したが、「グラフィックがキレイ」なものは今時たくさんあるものの、本作のようにもっと素朴で根本的「美」を感じさせてくれるゲームにはなかなかお目にかかれない。さすが7年かけただけのことはある。

 このゲームでしか味わえない特上の体験が確実に存在している、ということだけは断言しておきたい。それを味わうかどうかはアナタ次第である。なんかキザな言い方。

 つい先日の日本ゲーム大賞でも優秀賞を受賞した本作。さらに来年にリマスター版の発売を控えた『ワンダと巨像』の予習として、やるなら今しかない! なんか売り文句みたいな言い方。