rh日和(仮)

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宇宙探索ゲーム『Outer Wilds』をプレイした感想

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outer wilds ps4 - Google 検索

 宇宙探索ゲーム『Outer Wilds』のPS4版をクリアしました。

store.playstation.com

 いいゲームじゃった……。と、ついついおじいさん口調になってしまうのは、悠久の時を感じさせるストーリーだったから。

 以下、文章が進むほどにネタバレしていくので注意。

ゲームの概要

 宇宙飛行士となり、宇宙の謎を解き明かす一人称SFオープンワールドパズルアクションゲーム。

 インディーゲームであり、グラフィックの精細さ自体はそこそこなのだが、デザイン面はとにかく素晴らしく、サウンドも文句無し。

 スタート地点となる星「木の炉辺」は、宇宙船や機械、街や森など、どこか暖かさや懐かしさを覚える光景が広がっている。

 旅の途中で訪れることとなる星々に降り立つと、岩と砂、大海と竜巻、霧と茨など、どれも心に残るバリエーション豊かな景色が出迎えてくれる。


 主人公や仲間たちは目が4つで両生類のような特徴を持った「ハーシアン」という種族。宇宙の各地には先住種族「ノマイ」の痕跡が散らばっており、彼らの辿った顛末を追うことが最初の目的となるだろう。まさに太古のロマン。

 なお、ゲーム内に登場する星のサイズはほとんどが直径約1キロ以下、冒険の舞台となる銀河はせいぜい直径100km(目算)くらいのスケールとなっている。大気とか成層圏とかがどうなってるのかよくわからないが、これはこういう世界なのだと受け取っておくのがいいだろう。科学ガチ勢ではないので確かなことは言えないが。

唯一無二の自由な宇宙体験

 ゲーム的な特徴としては、とにかく自由度が高い。ゲームにおける自由度には色々なタイプがあるが、本作は「攻略の順番が自由」かつ「具体的な目標が明示されない」のが自由な点。

 ゲーム開始時には「宇宙船を飛ばすために必要な発射コードを機器に観測所へ行ってこい」という目的を与えられるが、それ以降の行動はプレイヤーの自由。誰かに何をやれと指示されたり、依頼されたりすることようなこともほぼ無い。

 あまりに自由度が高すぎると何をすればいいのか迷ってしまいそうなものだが、本作はその優れたゲームデザインのおかげで、むしろプレイヤーが主体的に目標に向かって突き進むことができる仕組みになっている。どういうことか。自分がプレイ中に感じた気持ちを例に出そう。

  • プレイ開始。宇宙船で自由に飛べる。スゴイ。楽しい。じゃあどうする? そりゃいろんな星を見に行くでしょ。
  • →いろんな星に行くと色んな景色が見られる。なんか砂が空に流れてったり、どデカい竜巻が島をブッ飛ばしたりしてる。スケール感パネェ。
  • →→ノマイの遺跡もある。謎の技術で作られた設備が動いてる。科学力がスゲー。
  • →→→どんどん探検していくとノマイが残した伝言板みたいなのが見つかる。別の星には違う施設があるらしい。なんだかよからぬ計画を立てていたりもする。もしかしてコレが宇宙の秘密の鍵なのかっ??


 といった感じで、プレイヤーが好奇心任せに探索をすればするほど次に進むべき場所、やるべき目的がドンドン湧き出てくるのである。

 そしてこの「好奇心」というキーワードがストーリーを貫くテーマとも重なっている。そういうゲームって、大体名作。


 なお自由度の一環として、各地にある焚き火でマシュマロを焼いて食べることができる。どうやら彼らの部族では一般的な行為らしい。

 ゲーム内におけるメリットは(多分)無い。にもかかわらず、「マシュマロを串に刺す→火で炙る→マシュマロの火を吹いて消す→食べる」という一連の工程を全てプレイヤーが手動で行う、謎のこだわりシステムとなっている。作り手のこだわりって良いよね。

自由度の高さの弊害

 自由度の高さの弊害は正直言ってある。というかかなりある、と言ってしまっていいかもしれない。

 最大の問題点が、アクションの難しさ

 宇宙船は前後左右だけでなく、上下も加えた3次元的な動きを制御しなければならない。最初は目的の星に着陸するだけでもひどく苦労するだろう。クリアまでに一度も墜落死しない人がいたら相当スゴイ。現実の宇宙飛行士の苦労をこんなところで味わうことになるとは。必然的に視点がグルグル動くので3D酔いする人にはプレイ困難かもしれない

 実は自動航行という便利な機能もあるのだが、それに関するチュートリアル等は一切無し。またうっかり目的の星との間に太陽がある状態で自動航行しようとすると、警告等無しにまっすぐ太陽に突っ込んでいってしまい、哀れ、宇宙のチリとなる。ハーシアンにAIなどという便利な技術は無いのである。

 同様に、プレイヤーの移動も歩きやジャンプに加えてブーストを使った空中移動が必須となる。ちゃんと落下ダメージも受ける。何度着地で足首をグネったことか(※そういう描写は無いです)。

 焚き火を踏めば火傷ダメージを受けるし、生身で地下水脈に落ちれば溺死。うっかり宇宙服を着忘れて宇宙空間に出て窒息死したことも1度や2度ではなかった。「死にゲー」の一種とも言える。ついでに、この手の3Dゲームにありがちな壁抜けバグからの落下死も1度経験した。

 全体として、必要以上にリアルかつ物理演算任せなアクションのせいでムダに難易度が高くなってしまっている印象。

 死んでもすぐにスタート地点に戻れるのだが、アクションが苦手な人にとって毎回スタート地点に戻されるのは結構なストレスだろう。

 例えばもしこれが「宇宙船に乗って目的地を指定するだけで演出&ロードが入って移動完了」というようなシステムであれば、難易度を下げつつゲームとして成立させることは十分できたハズ。

 でもそれだとこのゲームの少なくないウェイトを占めている醍醐味である「広い宇宙を独力で踏破する体験」をスポイルしてしまいなりかねないので、痛い痒しといったところ。


 謎解きに関しても同様で、うっかりどこかのテキストをひとつ見落としてしまっただけでストーリー進行が詰まってしまう恐れアリ。

 たとえ全ての情報を網羅できても、それで謎を解けなければ先には進めない。情報さえあればやるべきことはわかるはずだが、「大体何をやるかはわかったけど、具体的にどう行動すればいいかわからない」的な感じで悩んだこともあった。

 自分はクリアまではなんとか自力でたどり着けたが、一ヶ所だけ到達できずに攻略情報を見ることになった場所があった。Rのムーンとでも言っておけばクリアした人にはわかるだろうか。


 はっきりとプレイする人を選ぶゲームであることは間違いない。一人称のアクションに慣れ親しんでいる人、かつSFな知識が多少ある人でないと自力でのクリアは少々難しいかもしれない。

 謎解きに関しては攻略情報を見ればいいだけだが、アクションについては救済措置等は基本的に無い。慣れる前に飽きてしまうプレイヤーがいても落ち度では無い。

 しかし繰り返しになるが、こういったゲームデザインは宇宙探検のスリルと興奮という、ほとんど唯一無二のゲーム体験を味わうためには必要なものだった。これは断言できる。

ネタバレ:いわゆる〇〇もののストーリー

 各プラットフォームのストアなどで盛大にネタバレしているので書いてしまうが、本作は同じ時間軸を何度も繰り返す、いわゆる「ループもの」となっている。

 ゲームスタートから22分が経過すると太陽が爆発し、主人公は死亡してしまう。しかし謎の空間を経由して次に気がつくと再びスタート地点で目を覚ましている。何もかもが元通り。でも前回の記憶は持ったまま。

 なぜループが起こるのか? このループから抜け出す方法はあるのか? それらを探ることも旅の目的の一つとなる。本格ハードSFだ。


 ストーリーはとにもかくにも起承転結が見事。「まさかアイツラが全部悪いのでは?」と思わせてからの「そ、そっちかー!」的なドンデン返しもアリ。まんまとやられました。

 しかもこのストーリーテリングをオープンワールドで実現しているんだから、スゴすぎてもうよくわかんない。

 個人的には、ストーリー若が干首尾一貫しすぎて夾雑物が無さすぎるのがちょっとだけ気になった。宇宙は広く歴史は長いのだから、もっと無関係な情報があってもいいはず。まぁ細かいことではある。

 ストーリーの一部は、ごく基本的な量子力学の知識が無いと、若干意味が分かりにくいかもしれない。

 また終盤では、シュレディンガーの猫状態がゲーム的に表現されている。もしかすると、これだけメジャーなゲームでこういう描写されること自体が初めてかもしれない。


 だんだんゲームに慣れてくると、死の恐怖が希薄になっている自分に気づく。そのうち太陽爆発を待つのがメンドーだから自害するようになった。慣れって怖いね。

 実はメニューからタイトルに戻れば記録を持ち越したまま次のループに行けることに、プレイ途中で気づいた。

 さらにとある場所で、今回のループを終了して即座に次のループに行く方法が使用可能になる。キッチリループに順応していく主人公。偉い。

 しかし何回見ても太陽爆発の演出と音楽は最後まで怖いままだった。自分にとってのゲーム体験におけるトラウマの一つになった。もちろん悪い意味ではなく。


 実は本作はマルチエンディングとなっている。

 クリアしたエンディングが記録されるわけではないので、マルチエンディング自体に気づかない人もいるかもしれない。自力で全部見るのは困難だと思う。

 自分はさっさと攻略動画を見ることにした。英語版の公式Wikiがあるくらいなので、攻略サイト前提のゲームなのかもしれない。

 どうも日本語の攻略サイトにはどこにも載っていないエンディングを一つ発見したっぽいんだけど、あれはなんだったんだろう。

 考察サイトなども多数ある。それによると、ゲーム内の全ての情報を集めれば、ハーシアンやノマイの来歴がかなり詳らかになるらしい。

 なぜ彼らの目が3つや4つなのか? 謎が多い星「闇のイバラ」の正体は? などかなり面白い考察が読めるので是非探してみてほしい。

 かく言う自分もいつもよりだいぶ長い記事を書いてしまっている。それだけ多くを語りたくなるゲーム

おわりに

 上の方で「誰かに何をやれと指示されたり、依頼されたりすることようなこともほぼ無い」と書いたが、そういう「ひとりぼっち感」は、かなり意識的にストーリーやビジュアル全体を通して描かれているように思う。

 故郷の人々はみな親切だが、一度宇宙に飛び出せば主人公はたったひとり。先行した探検隊のメンバーと出会うこともあるが、情報交換やフランクなおしゃべりをするのみで、協力することもない。大きなクリーチャーも出てくるが、物を言わず佇むか、有無を言わさずただ主人公を捕食してくるだけ。あとはほとんどノマイたちの亡骸と、彼らが残したたくさんのメッセージがあるのみ。

 好奇心に従いやってきたノマイたちの足跡を、ひとりぼっちの主人公が解き明かし、やがて宇宙の果てへと至るさまは、孤独があってこそ、美しい感動を与えてくれた。

 「万有引力とは引き合う孤独な力である」という谷川俊太郎の詩を思い起こす、そんな作品だった。今日もまた新しいプレイヤー=主人公が、143億年の孤独に、思わずマシュマロを焼くことになるだろう。

Outer Wilds (Original Soundtrack)

Outer Wilds (Original Soundtrack)

  • 発売日: 2019/06/05
  • メディア: MP3 ダウンロード