ウォッチドッグス レギオン
— rh (@rhbiyori) 2023年9月30日
分裂すれば倒れる (ゴールド)
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『ウォッチドッグス レギオン』の本編ストーリーをクリアした。
メタスコアやユーザーレビューの評価が低いタイトルなのは知っていたが、UBIsoftのオープンワールドゲームは毎回マップの作り込みが素晴らしく、観光ゲームとしてだけでも遊ぶ価値があるだろうと思って購入した。
事前の評価に流されず、自分の目でどんなゲームなのかを判断したくなったので、レビューの細かい内容などは一切見ずに最後までプレイした。
その上でクリア後の感想として、総合的に見て「評価が低いのも納得」という感想だった。
↓前作のプレイ記事
rhbiyori.hatenadiary.jp
やや単調なステルスアクション
根本的なゲームシステムやゲームの流れが地味で単調で工夫が感じられない、というのが最大の理由。
ハッキングステルスアクションとして前作からあまり進化していない。
格闘、射撃、スパイダーボット、ドローン、トラップなどを駆使して敵を倒して進んでいくのだが、見栄えも含めてやっていることが前作とほぼ同じ。
ドローンの種類が増えているのが大きな変化点だが、リアルな挙動を再現したせいか、操作性が悪く敵を狙いにくい。近未来という設定なんだからリアルよりもゲーム性を優先して欲しかった。
また本作の中だけで見ても、ゲームが進行してもやることが序盤から終盤でほとんど変わり映えしない。
キャラクターのスキルである「スパイダーボット(潜入型)」が高性能すぎて、これに頼りきりになってますますゲームが単調になってしまった。
ステルス状態になって敵を一撃で倒せる上に、敵に見つかりそうになっても即回収すれば戦闘状態に移行しない。
回収後にもう一度スパイダーボットを投げればクールタイムを無視して再びステルスが発動可能になる。実質常時ステルス可能に近く、緊張感がほとんど無い。
理不尽な戦闘パートの強要
そんな難易度ヌルめのステルスアクションが基本のゲーム性なのだが、後半のミッションになると「敵拠点で目的物をハッキングした瞬間に敵が現れ戦闘になる」というパターンが出てくる。
こちらがどこに隠れていても構わずサーチしてきて強制的に戦闘状態になる。ハッキングの時間が終わるまでその場を離れることができないので逃げることも不可。
はっきり言ってこのゲームの戦闘はあまり面白くない。操作性の悪いTPSでしかない。ハッキングでドローンなどで戦おうとすると自キャラが無防備になってしまうので直接戦闘を矯正される。ハッカーらしさも薄い。
主観への切り替えもできないためエイムもやりにくい。カバーして物陰に隠れていても敵ドローンは平然と回り込んでこちらを撃ってくる。潜入では優秀だったスパイダーボットも戦闘ではまるで役に立たない。
格闘アクションもあるが、これが本当に地味。
攻撃・ガード崩し・回避の3つをやるだけ。敵の攻撃モーションが見にくくて回避が困難。ちょっとしたスローモーション以外はエフェクトも出ない。今時のゲームとはとても思えない地味さ。
敵が固くてなかなか倒せないのもストレス。ポカポカ殴り合っている様は、ハッキングアクションをやっているという感覚がまるで無い。敵が複数のときは妨害で倒すこともできないし。
今作は特定の主人公キャラクターがおらず、ロンドン市民を任意でスカウトして仲間に加えられるシステムになっている。
様々なスキルを持つキャラクターをミッションごとに使い分けることを想定して作られているのだろう。
しかしそのシステム上、1人のキャラクターが使えるスキルの数がかなり少ない。他オープンワールドゲームのように、レベルを上げるほど主人公のスキルが増えていって万能になる、ということはない。
にも関わらず、上記のようにゲーム後半のミッションではステルスパートと戦闘パートが1ミッション中に連続する。
なのでステルス寄りのキャラだと戦闘で苦労するし、戦闘寄りのキャラだとステルスで苦労する。かといってミッション中にキャラクターを切り替えることもできない。もはやゲーム性が破綻している印象すら受ける。
ミッションによっては1回敵にやられた後で交代することもできるが、プレイヤーとしては釈然としない。
そもそも戦闘が始まるのが毎回突然で、ミッション前の予告などもない。急に敵がわらわら集まってきて戦闘させられるのは初見殺し以外の何ものでもない。ストレスしか感じなかった。おかげで軽く胃を痛めてしまった。
最終盤のミッションでは人間の敵が無限に湧くステージも存在する。ファミコンのゲームじゃないんだからそういうのはやめて欲しい。敵も味方もロンドン市民で名前もあるって設定なのに。
ミッションによっては強制戦闘を避ける方法もある。プレイヤーキャラは貨物ドローンで高空に待機、ミッション目的をスパイダーボットでハッキング、ハッキング後スパイダーボットで敵弾が届かない位置に逃げる、という感じで。
しかしこれをやるとCPUの思考ルーチンの穴を突いてズルをしているようで、あまり楽しい感じはしない。むしろ「ちゃんとゲーム作れよ」と思ってしまう。
貨物ドローンの強力さも問題で、屋外のミッションはとりあえず貨物ドローンに乗って飛んでおくだけで有利になってしまう。わざわざ発着場に行かないと呼び出せないのが不便。
オープンワールドゲームで簡単に空を飛べるようにしてはいけないということを制作者はわかっていないハズがないのに、今作では最初からほぼ無制限に空を飛べてしまう。
移動にも便利なのだが、便利すぎて飽きてしまうので途中からあまり使わなくなった。
あまりうまく機能していないスカウトシステム
市民をスカウトするシステムもあまり上手く機能しているとは言い難い。
プレイする前は、ミッション中にそのあたりにいる市民に操作を切り替えて、ミッションを有利に進められる、みたいなゲーム性を予想していたのだが、全然そんなゲーム性ではなかった。
まずスカウトするために毎回ランダムミッションをクリアしなければならない。あの退屈なステルスミッションを、キャラによっては2つの拠点に対して1回ずつやる必要がある。
キャラもランダム、ミッションもランダムなので、キャラに対して思い入れが湧きにくい。
仲間のボイスはおそらく数種類の声をピッチ変更で水増ししているらしく、高い声や低い声が不自然で耳障り。
どのキャラでイベントを進行してもフルボイスで喋ってくれるのは、純粋にスゴいし頑張って作ってるなとは思うのだけれど。
仲間のスキルもそれほど強力ではないものがほとんどで、わざわざロードを挟んでキャラを切り替えるよりも、今使っているキャラでそのままプレイしたほうが手っ取り早いな、となりがち。
そもそもどのミッションでどのスキルが有効なのかは実際にミッションをプレイしてみるまでわからない。
例えば「ハッキングが得意なキャラに交代したいな」と思っても、敵エリア内ではキャラ切り替えできないのでわざわざエリアを出なければならず面倒。特定のスキルが無いと突破できない場面はほぼ存在しないので、じゃあこのままでいいか、となるのは必然と言える。
市民全てが主人公になりうる、というコンセプトは、非常に斬新で可能性のあるものだったと思う。
しかしゲームシステム面だけで見れば、単に主人公がランダムキャラクターになっている、という以上の効果は果たしていない。
むしろただ主人公のキャラクター造形する労力を惜しんだのではないか、と邪推すらしてしまう。
システム全体に「プレイヤーをこういう遊び方で楽しませよう」という意図があまり感じられない。
どちらかというとむしろ「既存のシステムに新しいシステムを加えて、なんとかそれなりに遊べるものをこしらえました」という苦心がうかがえる。そしてUBIsoftのオープンワールドゲームはシリーズ作品を重ねることにだいたいそうなっている印象。
他の細かいストレス要素だと、イベントの前後の会話によるストーリー説明がテンポが悪い。
会話中も自キャラを操作することはできるのだが、次のミッション地点が表示されないので、実質ただの待ち時間でしかない。後半は会話シーンを飛ばすことが増えてしまった。
ロンドン観光ゲームとしては史上最高峰
ひとしきり悪いところを言ったので、良いところも書いていこう。
まずロンドンの街並みのグラフィックは大変素晴らしい。
現代的な街並みをリアルに描いたゲームとしては同社の『ディビジョン』シリーズなどがあるがそれに並ぶクオリティ。
バッキンガム宮殿、ビッグベンなどの観光名所も再現されている。
ただ美しいだけでなく、小説「1984」的なディストピア+ネットワーク技術による支配体制によって荒廃している様も描かれている。デモ隊の活動。体制批判のストリートアートなど。
場所によってはいわゆる「夜の街」もある。さすがに中には入れないが。
ミッションとは特に関係のない路地裏までもが、ただのコピー・アンド・ペーストではなく個別に作り込まれていて、ただ散歩するだけでもなかなか楽しい。
本編のミッションとは無関係に、各地にある配送ロッカーで配送ミッションを受注できる。時間制限のないものを選べば、ロンドン市内を観光するのにちょうどいい。
ただ、マップの各地にコンプリートアイテムを配置してプレイヤーに「ゴミ集め」みたいなことをさせる、オープンワールドゲームのお約束は、さすがにもう無くしてもいいんじゃないかと思う。テキストや音声ならまだ許容できるが、お金をいちいち拾うのはだいぶ虚しい。じゃあ拾うな、という意見もあるかもしれないが、だったら最初から置くな、と言いたい。
ステルスアクション自体は上記の通り退屈だが、敵拠点のステージのデザインはそれなりに変化に富んでいて工夫を感じられる。おそらく建築関係などに造形の深い人が作っているのだろう。
ストーリーはサイバーSF的な作品にありがちな展開ではあるが、それなりに楽しかった。
ゲームシステム的に感情移入しにくかったプレイヤーキャラだが、イベントシーンの会話のおかげで多少は親しみを感じられるようになった。
巨大なコンピューターの内部でファンの風やヒートシンクの熱を避けてドローンで進むシーンはなかなか印象的だった。
ちなみに同じロンドンが舞台の同社のゲーム『アサシンクリード シンジケート』へのリファレンスがいくつか出てくるが、さすがにプレイしたのが昔過ぎてあまり覚えていなかった。
まとめ
いいところもあるんだけど、根本的なゲームシステムが地味かつ薄味で面白くない。それが今のところの感想。
積極的にプレイをオススメはできないが、かといってプレイしない方がいいと言うほどでもない。
もし本作が2015年くらいに発売されたゲームだったらそこそこいいゲームだと評価されていたかもしれない。
しかし本作は2020年発売。同じオープンワールドで比べても『Horizon Zero Dawn(2017)』『Marvel's Spider-Man(2018年)』『DEATH STRANDING(2019年)』の後に出たゲームと考えるとかなり厳しいものがある。同年には『Ghost of Tsushima』も出ているし。
なにより前作(2017年)からの進歩が乏しいのが寂しい。
ロンドン観光ゲームとしてはおそらく史上最高のゲームなので、それ以外の部分にあまり期待しなければ誰にでもオススメできるとは思う。自分もこのゲームでだいぶロンドンの地形を把握できたし。
そうでない場合はわりと人を選ぶゲームであることを理解した上で購入したほうがいい。ステルスアクション好きで本作がシリーズで初めてのプレイならアリかも、といった感じ。