rh日和(仮)

モノ、ゲーム、PCなどについてのブログ。

「処理落ちやアプリクラッシュと戦う放置育成ゲーム」と化したスマホ版『Vampire Survivors』の異様なゲーム体験について

 最近は毎日寝る前にiPadで『Vampire Survivors』をプレイしている。

Vampire Survivors

Vampire Survivors

  • Poncle
  • ゲーム
  • 無料

 このゲームの「本来の」内容を一言を表すなら「武器やアイテムを取捨選択して大量の敵を倒していくローグライク風味のアクションゲーム」といったところ。

 しかし特定のやり込み要素をやり込むことで全く別のゲーム性が顔を表す。

 「処理落ちやクラッシュと戦いながらキャラを育てる放置系ゲーム」になるのである。

 こんなゲームはプレイしたことがない。良いか悪いかは別として。


 このゲームのキャラクター育成要素であり、いわばエンドコンテンツに位置する「金の卵」。

 特定のボスを倒すか、ステージ上で手に入るコインを支払って購入でき、キャラクターのパラメーターをランダムに上げることができる。

 『ドラゴンクエスト』シリーズでいう「ちからのたね」「すばやさのたね」などと同じようなものと考えていい。ランダムではあるが確率はおそらく均等なので、実際は全てのステータスがほぼ均等に成長していく。

 ステータスの上昇はパーセンテージで管理されている。例えば金の卵を取ると「攻撃力が+0.05%上昇」といった具合に。それが累積され、例えば「攻撃力+50%アップ」の状態が永続的に続く。細かい数字は適当。

 またキャラステータスの中に「欲深さ」が存在し、このパラメーターが高いほど、入手できるコインが増加する。このパラメーターも金の卵で上昇する。

 これらの仕様がなにを引き起こすか。キャラを育てるほど入手コインの量が増え、さらにキャラ育成速度が加速していく、という指数的なインフレーションが発生する。

 簡単に言えばキャラクターがえげつないほど強くなっていき、しかも強くなるほど成長速度も上がっていくのである。さながらドラゴンボールの戦闘力のように。

 自分は現在攻撃力8000%程度だが、攻略サイトなどを見るとこんなものはまだまだひよっこ同然で、ずっとキャラを育成し続けている人はパラメーターを10のn乗(E+n)で表記している。「指数的」というのは誇張ではなく本当に指数を用いているのだ。

 パラメーターが上がると武器の弾数、弾速、クールダウン、攻撃範囲も上昇していく。そうなるともはや「弾幕が画面を埋め尽くす」というレベルを超越し、「得体の知れない光の明滅によって敵が出現と消滅を繰り返す」というかなりシュールな映像を見つめ続けることになる。

 なお斧やナイフなどいくつかの射撃系武器は弾速が速すぎて敵に十分なダメージを与える前に画面外にすっ飛んでいってしまうため、火力が他の武器に見劣りしてしまう。ヴァンサバのキャラにはもうちょっと、力加減というものを覚えて頂きたい。



 それだけキャラが成長すると、最大の敵は出現するモンスターではなくゲームの処理落ちとなる。

 武器を2種類持つだけで処理限界に達してしまい、容易にアプリが落ちてしまう。

 というか処理が重い武器は1種類でもfpsが低下し稼ぎ効率が悪化するため実質使用不可能になる。

 「悪食の瞳」という武器があり、倒した敵からコインを奪えるという一見稼ぎに適した性能をしているのだが、処理落ちが酷いため全く使えない、哀しい存在になってしまっている。泣いていい。瞳だけに。

 なお自分がプレイに使っているデバイスは第9世代iPad。決してハイエンドではないが、現在流通している全てのスマホ・タブレットの中では「中の上」くらいのスペックはあると言っていいだろう。決してマシンスペックが原因とは言い切れないハズ。

 またどういう内部処理が起こっているかは不明だが、一定以下の火力が低い武器を使うと敵を全く倒せなくなってしまい経験値が得られなくなる。どうも敵の動きが早すぎてHPが0になる前に画面外に行って消滅し、別の敵と入れ替わってしまっているように見えるが、実情は定かではない。

 一方プレイヤーキャラは最大HP、防御力、常時HP回復量が育ちまくっているためほとんどの敵の攻撃を受けてもHPが減らない鉄壁状態。なので敵味方が攻撃し合うが何も起こらない、きのこたけのこ戦争みたいな状態になる。ある意味平和。

 一部武器は激しい画面の明滅によりプレイヤーの視覚に直接ダイレクトアタックしてくるため、自分のように深夜暗い中でプレイするのには不適切。主に鞭。画面を見なければ対処できるが、画面を見ちゃいけないゲームって何?? ヴァンサバをプレイするときは部屋を明るくして云々。そういえば最近アニメでこの表記見なくなったな。

 こちらも条件は不明だが、一部ステージ+武器の組み合わせで壁を抜けて本来到達不可能な場所に移動することが可能。処理落ちのせいだろうか? コレを活用し、壁に潜ることで画面に映る敵の量を処理を軽くし稼ぎ効率を上げることができる。実にバグ技っぽいテクニック。

 現在自分が稼ぎに使っている編成は、武器を「極大聖年」1種類、アルカナ13、というもの。最も安定性と稼ぎ効率の両立が出来ている。灯台から出る不要なアイテム(火、凍結など)を封印しておくのがポイント。ただ今後パラメーターが上がったらどうなるかはわからない。最悪稼ぎプレイができなくなる可能性もある。

 スマホ版よりPC版の方が処理落ちが少なく安定性も高いと思われるが、電力の無駄な気がするので自分はプレイしていない。そもそも金の卵はスマホ版登場より前にアップデートで実装された要素だったんだけど、やり過ぎるとゲームバランスが崩れるんじゃないかと思って手を出さないようにしていた。手を出したら案の定崩れた。



 このように、処理落ちとクラッシュと戦う、というなんだかよくわからないゲームと化したVampire Survivorsだが、運営側はそれを是正するどころか「金の卵一括購入機能」や「移動速度が上がりすぎて操作不能になるのを防ぐ機能」を導入するなど、むしろ積極的にインフレを加速させようとしている。

 誰かスタッフに止める人はいないのか……と訝しみたくなるが、実際のところ必ずしも間違った調整方針だとも思わない。

 なぜならこのゲームは、そもそもプレイヤーが自分で難易度を調整してプレイすることを想定しているから。

 金の卵によるキャラクター育成はオプションで簡単にオンオフを切り替えでき、オフにすればデフォルトステータスのキャラでプレイ可能。あくまでオンオフなので育てたパラメーターが消失するわけではなく、オンにすればまたムキムキに鍛えたキャラで無双できる。

 他にもステージ開始時に「ゲームスピード倍速機能」や「アルカナ(選択式のパッシブスキルのようなもの)」の使用をプレイヤーが任意にオンオフが可能。そうして難易度を上げたからといってプレイヤー的にリターンがあるわけではない。一応ものによってはコインの取得量が増えたりするが、上記のような稼ぎプレイで入手できる莫大な量と比べればその差はほぼ無いに等しい。低難易度で無双プレイを楽しむもよし、高難易度でクリアを目指すもよし、そういった自由度の高さがこのゲームの魅力のひとつ。

 ゲーム難易度を「ノーマル」や「ハード」といった形式で選択できるゲームは他にいくらでもあるが、それらは敵の強さやゲーム速度を変更するだけの場合が多い。対してこのゲームは「プレイヤーキャラクターの強化要素のオンオフ」という形で難易度調整を可能にしている。意外と珍しいシステムなのではないかだろうか。

 なので例えキャラのステータスが+(10の20乗)%になったとしても、それだけでゲームバランスが崩壊しているとは言えないのである。


 ただインフレ稼ぎのせいで今後のアップデートが難しくなっている感はある。

 例えアプデでどんなステージ、どんな敵を追加したとしても「金の卵で鍛えたキャラなら一瞬でクリアできるし……」と考えるプレイヤーにとってはあまり魅力を感じられないだろう。

 かといって金の卵の使用を縛るような新要素を導入してしまうと、それはそれでインフレ育成プレイを楽しみにしていたプレイヤーが興冷めして離れてしまう恐れがある。

 そもそも現時点でゲームのボリュームそのものがインフレ気味なので、ここらへんが潮時、と考えて運営が放置稼ぎというエンドコンテンツを用意した可能性はある。

 逆にここからアップデートで更に上の面白みを実現できたとしたら、相当スゴイ。ちょっとしたゲームの歴史に残るかもしれない。というのは大げさ気味だけれど。