rh日和(仮)

モノ、ゲーム、PCなどについてのブログ。

『グランブルーファンタジー リリンク』クリア後感想 王道ストーリーから見えるコンシューマー化への覚悟


 『グランブルーファンタジー リリンク』をクリアした感想。

グラブルファンにとしては200点満点

 最初に結論を書くと、元々原作『グランブルーファンタジー』のファンだった自分にとっては100点満点中200点の、満足を超えた大満足な作品だった。自分が「グラブルのアクションゲーム化」に求めていたものを、全てにおいて大幅に上回っていた。

 具体的には、原作の良さをそのままスケールアップし3D化したストーリー、豊富なセリフの掛け合いなどのキャラクター描写、奥深いアクション、クリア後のやりこみ要素。これらすべてが発売前の「こうだったらいいな」を超えている。だから200点。


 じゃあグラブルを知らない人向けにどんなことを言えばいいだろうか? 「多少人を選ぶ要素はあるが、総じてクオリティの高いアクションRPG」といったところか。

 しかしこの「多少人を選ぶ」の部分が、どの程度人を選ぶのかが、自分には判断がつかない。

 なにせ自分にとっては200点満点の作品。好きすぎて客観視が難しいのである。対象が人であってもゲームでもそれは変わらないのかもしれない。

ド王道なストーリー

 ストーリーは至って王道なファンタジーRPG。人を助けて仲間との絆で世界を救う。以上。

 ではあるのだが、テンションがブチ上がるシーンがひとつやふたつではない。心の中で拳を突き上げまくり。ハート震えまくり。

 特に魅力的な敵キャラを描けているのが素晴らしい。こういうのみんな好きだよね、というツボを的確に突いてきている。

 まるで往年のハリウッド大作映画を観たような満足感。これを自分の好きな作品で観られるのだから、悦び以外のなにものでもない。

 しかしこの「王道」という要素も、現代では人を選ぶ要素になりうるのかもしれない、とも思う。

 昨今は「勇者が死んだ後の世界」を描いた漫画が大ヒットしている。それ自体が悪い訳では全く無いが、そんな時代に本作のような「勇者が世界を救う話」がどれだけ受け入れられるのか。

 そもそもその「王道」というのも、いわゆるJRPGにおける王道であり、広く言えば漫画やゲームといった「和製フィクション」の王道である。ごく個人的なイメージで言えばスーパーファミコンからプレイステーションくらいの時代、というか。

 今どきそんな「ド王道」でいいのか、といった批判もできるだろう。

王道ストーリーに見える覚悟

 じゃあ原作グラブルのストーリーはどうなのかというと、初期のメインストーリーこそ本作リリンクのような王道路線だったが、もうすぐサービス開始10年を迎える最近のシナリオではパラレルワールドなどのモチーフを取り入れた複雑なストーリー展開をみせている。

 また毎月配信される外伝的なストーリーイベントでは、時事ネタまで取り入れたギャグシナリオや、青年漫画的なハードコア路線、熱血ロボットもの、宇宙SFなど、実に多様なシナリオをフルボイスで提供してくれている。

 つまりグラブルのシナリオ制作陣の力量からすれば、リリンクのシナリオを変化球にすることもそれほど難しくなかったと思われる。

 にも関わらずあえて「ド王道」を選んだのは、元々「スマホで本格RPGが遊べる」をコンセプトとしていた原作グラブルが、コンシューマーRPGの世界にいわば逆輸入的に乗り込む形となったことが大きく影響しているだろう。

 サイゲームスは他にも格闘ゲームの『グラブルVS』や『リトルノア』などをコンシューマーでリリースしているが、本作は「スマホRPGからコンシューマーRPGへ」というわかりやすい図式があるため、ゲームメーカーとしてより重要な一手だったことは間違いない。

 その重大な局面で、「こっちの世界でもやれるんだぞ」という意思表示、決意表明として、本作はエンターテイメントから逃げずに真正面から勝負したのではないか。

 そういった観点から見れば、誰がプレイしてもわかりやすく面白いものに仕上がっている本作のシナリオは、確実に成功していると言えるだろう。

サイドストーリーも充実

 なおメインストーリーのボリューム自体はいわゆるフルプライス作品にしてはやや少なめ。公式側からの想定プレイ時間は20時間。

 ストーリー全体の後ろ半分がクライマックス、といった印象で、盛り上がりとしては申し分なかったが、他の長大なRPGにあるような「日常の何気ないシーン」や「細かいキャラ描写」みたいなものは少ない。そういう意味でも映画的なストーリーとなっている。

 そういった細かい描写は、クエスト中に入手できるテキストや、操作キャラそれぞれの物語を見られるフェイトエピソードなどの、いわゆるサイドストーリーで補完されている。

 フェイトエピソードは基本的にテキストベースで、2回ほどアクションパートが入る。ストーリーパートは3Dグラフィックの「止め絵」とテキスト+ボイスのみで演出がやや寂しいが、内容自体は世界設定やキャラ描写がしっかり描きこまれていて、原作ファン的にも満足度が高かった。

2つのゲーム性のシームレスな接続

 メインストーリーはキャラクターと武器のレベルを上げ、スキルツリーでキャラを強化していけばクリアできるバランス。一般的なアクションRPGのプレイフィールに近い。

 そしてメインストーリークリア後のエンドコンテンツは、一転して周回育成ゲームに変わる。

 レベルアップやスキルツリーは上限に達し、クエストをクリアして素材を集め、ジーン、武器覚醒、武器の加護といった育成要素を強化していくことになる。マルチプレイも可能。いわゆる「狩りゲー」的なゲーム性に変わる。

 原作グラブルさながらの「プレイするほどキャラが強くなる楽しさ」がうまく家庭用ゲームに落とし込まれている。ガチャ的なものも回せる。もちろん無料で。

 この「2つのゲーム性のシームレスな変化」が実によくつくられている。2つのゲーム性を1つのゲーム上で実現するのは、地味だけどかなり大変なハズ。スゴイ。

 エンドコンテンツの周回プレイも人を選ぶ要素ではある。原作グラブルほどシビアではないが、ランダムドロップの素材を求めて同じ敵を何度も倒し続けなければいけない。

 しかし周回要素にタッチしなくてもメインストーリーは十分クリアできるので、まずそちらをクリアしてから、やりたくなった人はエンドコンテンツに手を出せばいい。やるかやらないかをプレイヤーが選べるという意味では行き届いた作りになっている。

 自分は現在もエンドコンテンツをやり込んでいる。ネタバレ防止の為細かい話はしないが、わかる人にだけわかるように言うと、「えらいごっついマシーン(なぜ関西弁なのかは自分でもわからない)」を倒すところまで行った。スキルの種類がとにかく豊富で、カスタマイズが非常に楽しい。

シンプルかつ奥深いアクション

 アクションのシステムは非常によくまとまっている。

 基本の攻撃ボタンは2つ。さらに4つのアビリティを自由にセットしてカスタマイズできる。

 複雑な入力などは必要ないが、操作キャラごとに独自システムがあり、操作感が大きく変わるため、上達する楽しさを味わえる。

 原作だと2Dだったキャラクターが、3Dになるとこうやって動くのか、という感動もある。格闘ゲームの「グラブルVS」と比べると、空間を広く使えるぶん全体的にダイナミックなモーションになり、エフェクトも豪華。

 防御システムとしてガードと回避が2つ用意されており、どちらも一長一短ある。両方を的確に使いこなすことでより敵を効率良く倒せるので、これもやりこみポイント。

 アクションが苦手でも、ボタン連打で的確に敵を攻撃してくれる「アシストモード」、移動操作だけで攻撃までオートになる「フルアシストモード」が搭載されているので、誰でもストーリーを楽しめる。

 ちなみにこのアシスト機能は高難易度クエストでは使えないが、ある程度低難易度のクエストまでは使用可能なため、稼ぎプレイに利用できたりする。まるでスマホゲームのオート周回機能。こんなところでスマホゲーム感を出してくるとは。


 原作ファンなら大満足の出来映え。そうでない人にとっては、王道すぎるストーリーが逆に人を選ぶ可能性はある。クリア後のエンドコンテンツも好き嫌いが分かれるかもしれない。

 しかし「キャラクターが魅力的なファンタジーRPG」が好きな人や、「周回プレイで強くなるアクションゲーム」が好きな人にとっては、十分にプレイする価値があるハズ。

 両方好きな人にとっては自分史上最高のゲームになるかもしれない。