映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を観た感想。
前作に引き続き、映像表現は「神」の領域。
ある種の芸術表現を見ていると「自分と同じはずの『人間』がこんなものを創ったなんて信じられない」と感じるわけだけれど、本作および前作のアニメ版スパイダーバースシリーズがまさにそれ。
そういう意味で「神がかっている」という日本語がふさわしい。
その映像表現で救命アクションをし、心理描写をする。ただの「アニメ」と呼ぶのがはばかられるほどの視聴体験だった。
スパイダーマン・インディア、スパイダー・パンクの登場により、アートスタイルのバリエーションがさらに増している。
本作のストーリーは、アメコミというシステムへのメタ的な批評になっている。
アメコミは、商業的事情により、同じキャラクターを生み出し続けなければならない。
同じようなオリジン(出自)を持つキャラクターをリブートとして沢山作り続ける。
だからファンは同じキャラクターとして安心して追いかけ続けられるし、制作側としても時代に合わせて細部を変えてキャッチアップしていくことができるわけだけれど、ファンでない人にとっては「また同じ話か」となりかねない。
実際自分も本作を見て「また『自分で蒔いた種を自分で拾う話』か」と既視感を感じた。
その問題と次回作でどう向き合うのか。
作る側としては、「オリジン」から完全に自由なスパイダーマンを作ることは、やってできないことはないだろう。
でもそうして生まれたキャラクターは、はたしてスパイダーマンと呼べるのか?
そういった問題が「カノンイベント」という設定によって表されている。
私見では、某国産大作ゲームとほとんど同じテーマを扱っている。世界的な流れなんだろうか。
多分次回作ではマイルズは、スパイダーマンに共通する「オリジン」を持たないスパイダーマンになるのではないだろうか。
あと木村昴演じるスパイダーパンクのセリフの節回しに、ラッパーならではの音楽性を感じた。演技と配役が素晴らしい。