「モンスターハンターワールド:アイスボーン」の話。そろそろ本作全体の感想を書いても良い頃なんじゃないかと思って書き始めたんだけど、どうしても「残念なところ」について触れることが避けられませんでした。
どうしてもこういうことは神妙な書き方にならざるを得なかったけど、今作の操虫棍は楽しいし、新モンスターや新マップもよく出来ています。それだけにもったいない部分が多すぎる! そういう気持ちで公開することにしました。
はじめに
「モンスターハンターワールド:アイスボーン」を発売からずっとプレイしてきました。
マスターランクのクエストは9割方クリアしました。導きの地は森林・荒地・陸珊瑚をレベル7まで上げて、そこまでに出てくるモンスターはほぼ全て狩猟しました。
あくまでも強調しておきたいのですが、アイスボーンは全面的にダメなわけじゃないです。
これまでのモンスターハンターシリーズの良さであるアクション性や、生態学とファンタジーを融合したモンスターの描写などに加えて、美しいグラフィックや新モンスターのクオリティは最新作に相応しいものだと思います。
特に、実質的な前作であるワールドから始めたようなライト寄りのプレイヤーであれば、アイスボーンは価格相応に楽しめるんじゃないかと思います。
でも少なくとも自分にとってのアイスボーンは、看過できない不満点がいくつかあって、そのせいでプレイするたびにどんどん細かいストレスが溜まっていきました。
自分がモンハンシリーズに求めているものは、一言で言えば「巨大なモンスターを狩猟するアクションゲーム」であることです。
細部まで作り込まれた広大なフィールドで、動物や恐竜のような巨大なモンスターに、武器や道具を駆使して立ち向かうアクションゲーム。そのようなゲーム性でモンハンに比肩するようなタイトルは、自分が知る限り他にありません。
でもアイスボーンで追加された新要素は、そのようなアクションとしての楽しさを阻害する方向に働いているせいで、いちいちストレスが生じてしまっていると感じます。
クラッチクローの単調さ
まず新アクションのクラッチクロー。ロープ付きのかぎ爪を敵に発射しすることで敵の体に飛び乗り、攻撃などを行います。
モーション自体は「進撃の巨人」みたいでなかなかかっこいい。
でも現状では効率よくモンスターを倒すためにはクラッチクローの使用が必須になっています。
どのモンスターに対してもまずクラッチクロー。自分がどの武器を使っていてもとにかくクラッチクロー。
結果的にプレイヤーや武器ごとの個性を出す機会が減ってしまっていて、少々ゲームプレイが単調になってしまったように感じます。
しかも武器ごとにクラッチクローの使いやすさに違いがあり、それが強い武器、弱い武器という格差になってしまっています。
もちろん従来どおりクラッチクローを使わずにモンスターと戦うこともできます。
個人的にはクラッチクローの使用を少なめにしたほうが楽しいと感じます。
でもそれは端的に言って非効率な「縛りプレイ」でしかない。なんというか、自分が並んでいないレジだけの会計が進んでいっている時のようなストレスを感じます。
全体的に弱体化した武器・防具
武器や防具のバランス調整も首を傾げざるを得ない部分が多々あります。
まず多くの武器種が前作ワールドにあった強みを潰されています。
仮に、一部の突出した強みをマイルドにして武器種間のバランスをとろうとしたのであれば納得できます。
でもそこそこの強さだったガンランスが新モーションのせいでやけに扱いにくくなったり、特に強いわけではなかった双剣や片手剣が属性ダメージの弱体化によって弱い武器にされてしまいました。理由がわかりません。
代わりに強くなったスラッシュアックスは、クラッチクローからの武器攻撃を連発するのが強力な行動になっています。これも新要素の押し付けに感じます。
そしてヘビィボウガンの圧倒的な火力はほぼ前作のまま据え置きです。
防具に関しては、アイスボーンで新しく作れるようになったもののほとんどが防御力以外のスキルなどの性能面で前作ワールドのものと同じ程度か、むしろ弱くなっています。
でもアイスボーンのモンスターの強力な攻撃に耐えるためには新しい防具に頼らざるを得ない。
つまりわざわざ弱い防具を作るために、時間を書けてモンスターを倒さなければならないわけです。あまりモチベーションが上がりません。
「蒸気機関管理所」という虚無
新要素として拠点に「蒸気機関管理所」が追加されました。
ゲームをプレイすると自然に溜まっていく「蒸気」を消費してアイテムが貰えるミニゲームなんですが、簡単に言えばスロットゲームと同じシステムです。
プレイヤーの操作介入度は多少あるものの、基本的には運任せで時間がかかるので、ほとんどのプレイヤーがボタンを押しっぱなしで放置しているんじゃないかと思います。自分はコントローラーを逆さまに机に置くことで、R2ボタンが押しっぱなしになるようにしています。
正直言って「自分は一体何のためにこんなことをやっているんだろう」という気持ちになります。虚無です。
そもそもスロットを始めとするギャンブルが人を依存症にするほど惹きつけるのは、お金(報酬)が手に入るか入らないかわからないからです。
それに対し蒸気機関管理所では、おおむね払った対価に対して見合った量の報酬を得ることが出来てしまいます。
しかも無駄に演出が凝っているせいでPS4に負荷がかかるらしく、ファンが激しく回ります。ゲームをやっていて「電力の無駄だな」と感じたのはクッキークリッカー以来です。
それ以外にも拠点でやらなければいけないことが多すぎます。「植生研究所」「交易船」「バウンティの管理」「増えすぎた調査クエストの消去」「オトモダチ探検隊」「食事」「よろず焼き」等など。そして「蒸気機関研究所」。当然その間アクションは楽しめない。どうも製作陣はそれがシリーズの伝統だと思っているフシがあるようです。
遠回りの塊な「導きの地」
そしてゲームニュースサイトなどでも取り上げられた、本作のエンドコンテンツである「導きの地」の問題点。
アップデートで多少は緩和されましたが、それでも本質的な面倒くささはあまり変わっていません。
システム的なことを細かく説明すると大変煩雑になるのでざっくり言います。
地帯レベルを上げるのにそれなりの時間がかかる。にも関わらず、ある地帯レベルを上げると別の地帯レベルが下がってしまうので、全てのモンスターを倒すのに莫大な時間がかかる。下がった時に表示される「LEVEL DOWN…」というメッセージが不愉快。
地帯レベルを下げないためには関係ないモンスターに出会っても全力で逃げなければならない。
弱いモンスターを倒す前に地帯レベルを上げてしまった場合、そのモンスターの素材を得るには意図的にレベルを下げるプレイングをする必要がある。そしてレベル下げにはレベル上げよりも時間がかかる。
そのような弱いモンスターの取りこぼしを防ぐためには、これまでどのモンスターを倒してきたかプレイヤーがメモをとるなどしてチェックしなければならない。
モンスターの出現がランダムなので、目的のモンスターと戦うためにはエリア移動してロードを繰り返すか、それほど入手頻度が多くない消費アイテム「特殊痕跡」を使わなければならない。
といった感じでとにもかくにも時間がかかってしょうがない上に、そもそもこのシステムの必然性があまり感じられません。おそらくマルチプレイでの協力を意図して作られたモードなんだと思いますが、現状ではあまりに遊びにくいので過疎になっています。
従来の「クエストを受注してモンスターを倒して素材を集める」というプレイの流れに、レベリング要素とランダム要素を加えて、ただ複雑にしたようにしか見えない。単なる遠回り。でもより強力な装備を得るためにはプレイが必須になっている。
また「導きの地」ではモンスターが通常のフィールドよりも多くの素材を「落とし物」として地面に落とすので、プレイヤーであるハンターはこれを拾い集める必要があります。
1回ごとに「よっこいしょ」というモーションが挟まります。
多いときには1度に3つの落とし物を落とすので、それを3回拾わなければなりません。
もはや自分がプレイしているゲームが「モンスターハンター」なのか「落とし物拾い人」なのかよくわからなくなってきます。
ある時期からモンハンシリーズは明確に「エンドコンテンツ」の要素をゲームに導入するようになりました。
それが面白いときもあればイマイチなときもありました。
個人的な感想として導きの地は、シリーズで最も評価が低かったMH4Gの「極限状態モンスター」と並ぶくらい良くないものだと感じました。
まとめ
アイスボーンの新システムを虚心に解釈すると、製作陣はモンハンプレイヤーのことを「プレイ時間が伸びて面倒なことが増えるほど喜ぶ人たち」だと考えているように見受けられてしまいます。
あるいは制作期間や予算が足りなかったためそれらの要素で水増しするしか無かった、というのは穿ち過ぎでしょうか。
これは完全な妄想ですが、現在Nintendo Switch版のモンハンを開発中で、そのためにアイスボーンにリソースを避けなかった、というような理由であればまだ納得できます。むしろそうであって欲しい。
モンスターが強すぎて面白くない、という意見も見受けられますが、これに関しては個人の主観が絡むので判断がやや難しいところ。
自分は長年のモンハンプレイヤーなので、まだ出会えていない終盤のモンスター(高レベルの瘴気地帯と溶岩地帯のみに出てくる個体)以外はソロプレイで討伐できていますが、せっかく前作ワールドで広げたライト層や海外プレイヤーといった層をふるい落としかねない難易度にはなってしまっているかもしれません。
冒頭にも書いたとおり、アイスボーンには良いところもちゃんとあります。
過去作のモンスターが多数復活したのは嬉しかったし、初めて渡りの凍て地に足を踏み入れたときはこれまでの新作と同じようにワクワクしました。
でも肝心のゲームとしての「遊び」の部分のシステムが足を引っ張ってしまっているように感じられます。
これだけ多くの問題があると、アップデートで修正できる規模を超えてしまっているかもしれません。
にも関わらず「マイハウス」という自室をカスタマイズできる新機能はアップデートでどんどん充実していっています。プレイヤーとしてちょっと切ない気分です。
一般的に一度離れたプレイヤーがアップデートで改善されたからという理由で戻ってくる率はあまり高くないようです。
それでもモンハンシリーズの信頼を少しでも取り戻すために、少しでも多くの改善を望みたいです。
モンスターハンターワールド:アイスボーン マスターエディション - PS4
- 出版社/メーカー: カプコン
- 発売日: 2019/09/06
- メディア: Video Game
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