Amazonプライムビデオに追加された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を鑑賞。
※この記事は作品のネタバレを含みます。
スーパーマリオの映画と言えば、かつて実写版が制作されたものの、原作とあまりにもかけ離れた内容だったために半ば黒歴史と化してしまった、という経緯がある。テレビゲームの映画化そのものも賛否分かれる作品が多いため、本作公開前は期待と不安が入り交じる声が多く見られた。
自分も実写版のマリオ映画は小さい頃にテレビで見て、なんか下水道に気持ち悪い黄色いネバネバがいっぱいあったことと、クッパが舌をベローンと伸ばすシーンだけが、トラウマ的に心に残っていたりする。
子供が対象のマリオの映画で子供にトラウマ植え付けたらダメじゃん、と今の感覚なら当然のこととして思えるが、そもそも当時はゲームの映画化自体も前例が無く、誰もノウハウを持っていなかったのだから致し方ない面もある。怪奇系映画としてはある程度評価されているらしいし。
しかし実際に公開された今回の3Dアニメ版新作マリオ映画は、そんな不安を吹き飛ばし大ヒット。各種レビューでも高評価を得た。
そんな本作を鑑賞してまず感じたことは、マリオファン、そしてゲームファンを喜ばせようという意図に満ち満ちているということ。
冒険して、仲間を見つけて、ボスを倒す、というTVゲームの王道的なストーリー展開。
様々なマリオシリーズのゲーム画面を彷彿とさせる、アクションシーンなどの絵作り。
ゲーム版のマリオを知っているほど楽しい小ネタの数々。自分のマリオ知識はマリオ64あたりまでだが、それでも様々な発見があった。
これまでゲームをプレイしてきたプレイヤーへの、恩返しのような映画になっている。
マリオシリーズのステージやアイテムを知っているほど先の展開が読める場面が複数あるが、それで退屈になるのではなく、むしろある種のサプライズとしてプラスに働いていた。具体的にはマメキノコやレインボーロード。
そしておそらくマリオを知らずにこの映画を見た人にとっても、それらの不思議なロケーションはアイテムは、ファンタジックな場面演出の装置として印象的に作用していたと思われる。
キャラクターが飛び跳ねたり、アイテムで変身したりする非現実が、「原作再現」と「3Dアニメらしいワンダー」を兼ねていた。
その手つきの鮮やかさに脱帽。マンマ・ミーア。
ストーリー進行もハイテンポで心地いい。特に2Dアクションのマリオシリーズは「クッパを倒してピーチを助ける」以外のストーリーがほとんど無いのが特徴だが、それをギリギリ映画が成り立つ最低限の物語の量に抑えつつ、アクションシーンのクオリティに注力していた。「マリオ映画」としてこの上なく正しい選択だと感じる。
マリオシリーズの誕生と同時期の、80年代ポップスが要所で用いられていたが、ボニー・タイラー『Holding Out for a Hero』がマリオの熱血修行シーンで流れたのは、同曲の日本語版が主題歌として使われたドラマ『スクール☆ウォーズ』への目配せでもあると感じた。
ピーチが終盤でアイスピーチに変身して戦うのはちょっと『アナと雪の女王』を彷彿させる。
最後にマリオとルイージがクッパを倒すキックは、仮面ライダーのライダーキックや、そのオマージュであるエヴァンゲリオンのユニゾン攻撃へのリファレンスだろう。それがマリオの「ジャンプで敵を倒す」という基本アクションとリンクしているのがまたアツい。
勇気を出して逆境に立ち向かうラストの展開は、まさにヒーロー映画の王道。決意を新たにするマリオのすぐ側のゲーム筐体に「Help Jumpman」(ジャンプマンはマリオの開発時の仮ネーム)とさり気なく書かれているのは実にニクい演出であった。
「マリオの映画化」として100店満点の出来。マリオ世代の親子が一緒に観るには最高の映画だろう。配信で一時停止しながらじっくり小ネタを探すのも楽しそう。