『ストリートファイター6』の話。先日のストリーマー大会を観て、モダンタイプの操作がいかに初心者にとって良いシステムかがより深くわかったので、その話をしたいと思う。
モダンタイプの最大の特徴はワンボタン必殺技と、連打でコンボを出せるアシストコンボの2つ。
しかし似たようなシステムの格闘ゲームはこれまでも存在したし、その中にはスト6よりも洗練されたシステムのものもあった。自分が知る中では『ドラゴンボールファイターズ』や『グランブルーファンタジー ヴァーサス』など。
そこからさらに次世代のゲームとして発売されたスト6が優れている点は、単にそれらの初心者救済システムを搭載するだけでなく、対戦システムそのものに初心者救済システムを活かす要素を組み込んだこと。
具体的にはドライブインパクトとドライブパリィの2つのシステムである。
ドライブインパクトはカウンターヒット、ドライブパリィは発動した瞬間に攻撃を受け止める「ジャストパリィ」を成功させることで、それぞれド派手なエフェクトとサウンドが発生し、ゲーム内時間が1秒ほど停止する。そして基本的に成功した側が一方的に攻撃することが可能になる。ほかゲームの似たような演出として『ギルティギア ストライヴ』のカウンター演出があるが、それを発展させたものと言える。
この演出は、観戦している人にとっても「なにかスゴイことが起こっている!」ということが確実に伝わるという点でよく出来ている。
そしてプレイヤーも、絶好のチャンスを即座に認識することができ、時間停止の間に反撃の準備に移れる。
いわばこのチャンスタイムにアシストコンボやコマンド不要の超必殺技を叩き込むことで、格闘ゲームが初心者でも確実に相手の体力を奪うことができるのだ。
アシストコンボは「アシストボタンをホールドしながら攻撃ボタン連打」というワンステップ、ひと手間が必要になる。ただボタンを連打するだけでコンボが繋がる他ゲームの初心者向けコンボシステムと比べると、初心者に厳しくなっているようにも見える。
しかしスト6にはコンボを狙うためのチャンスタイムが用意されており、「狙ってアシストコンボを出す」という成功体験をプレイヤー自身の手で達成させることで、満足感や爽快感を味わえる仕組みになっている。成功体験こそが格闘ゲームの醍醐味の重要な部分であることを、制作スタッフはちゃんとわかっているのである。
またドライブインパクトやドライブパリィのシステムそのものも、上級者のやりこみ要素という側面を持ちつつも、実は初心者向けな面を持ち合わせている。
ドライブインパクトは、わりと雑に振り回すだけでも、初心者同士の対戦ならかなり強力な技となっている。相手の攻撃を受け止めることができ、カウンターすれば上記のようにチャンスタイムとなるため。初心者でも、ドライブインパクトを出すか出さないか、というシンプルな読み合いができる。読み合いもまた格闘ゲームの醍醐味である。
またドライブインパクトは、相手が発動したのを確認してからこちらも発動させることで、ほぼ確実なカウンターが可能。
このいわゆる「インパクト返し」は、言葉で書くと難しそうに見えるが、赤いエフェクトを見てからワンボタンを押すだけ、という純粋な反応速度の要素が強いため、格闘ゲーム経験は成功率にあまり関わらないと言える。
「アクション系のゲームは得意だけど格闘ゲームは初めて」という人は、画面に反応してボタンを押すという経験を積んでいるのでそれなりにインパクト返しが狙えるハズ。それができるだけで一段優位に立てるし、わかりやすい達成感が得られる。
ドライブパリィは中段・下段・めくりを全て防げるため、完全な初心者にとっては「確実な防御方法」として機能する。使うほどゲージが減る点や、ジャストパリィの存在など、全体的に『スマブラ』シリーズのシールドに近い仕様。
そしてジャストパリィはインパクト返しと同じく、ゲーム慣れしている人ならギリギリ狙えなくはないレベルの難易度。相手の突進技などに合わせるならそこまで絶望的に難しくはない。こちらも格ゲー歴に関係なく使えるシステムと言える。リズムゲーが得意な人はジャストパリィも得意かもしれない。さらに言うと上級者でも確実に狙えるわけでは無いため、その偶発性が試合のダイナミズムを生んでいる。
実際、先日のストリーマー大会も、別のゲームでプロ並の腕前を持つストリーマーたちがメキメキと上達し、特にインパクトやパリィを活用した戦いを見せ、コマンド投げと打撃によるシンプルな択で戦う姿が印象的だった。
自分もモダンの良さを体験すべく、あえてほとんど練習せずにモダンタイプのケンでバトルハブでの対戦に挑んでみた。
めちゃめちゃ楽しかった。対戦しながら試行錯誤して成長する実感を味わえた。
コンボを覚えずに対戦すると、本来は大きすぎるリターン差で完敗してしまいかなりつまらない対戦になってしまうが、アシストコンボのおかげでそれが起こらない。
対空や突進、はては中下段の崩しまでもワンボタン必殺技でこなすことができる。
アシストコンボはかなり「痒いところに手が届かない」部分があるため、そこを実戦の中でちょっとずつできる範囲で改良していくのも楽しかった。
格闘ゲームを遊ぶ、という感覚を久々に味わえたかもしれない。これまで格闘ゲームは、いかにランクマッチでランクを上げるかに注力してプレイしてきたけれど、スト6はしばらくの間、モダンタイプで色々なキャラを触りながらバトルハブで気軽に遊ぶところから始めてみようと思う。ほんと、懐の広いゲーム。