『ストリートファイター6』のランクマッチに新しく「マスターリーグ」というシステムが導入された。
マスターリーグはイロレーティングというレーティングシステムを採用しているらしい。
- ランクマッチの最高段位「マスター」に到達した全プレイヤーが、1500ポイントを持ってスタート。マスター同士で対戦したときのみ、勝つとポイントが増え、負けるとポイントが減る。
- 自分より所持ポイントが多い相手に勝つとより多くポイントが貰え、逆に所持ポイントが少ない相手に買っても得られるポイントは少ない。
- 勝者と敗者のポイント増減は合計するとゼロになる。
- ポイントの近いプレイヤー同士から優先的にマッチングする。
という感じ。イロレーティングについても実際のスト6のシステムにも全然詳しくないので間違っていたら申し訳ない。
イロレーティングはより実力が反映されるレーティングシステムで、チェスや将棋のレーティングにも用いられているとのことである。
マスターリーグ導入により何が起こったか。
どうやら、より実力の高い最上位層のプレイヤーがマスターリーグに集まり、逆にマスターランク内で下位のプレイヤーはバトルハブに流れているらしい。ただしソースは動画配信のコメント欄やSNS。
最上位プレイヤーの間でのマスターリーグの評判は「実力が近い人と対戦しやすい」「真剣勝負ができる」と上々。配信上も含めて日夜熱い戦いを繰り広げている様子。ただしここ数日はEVO開催中のため多くの有名プレイヤーはラスベガスに渡っている。
一方マスターリーグのシステム上、実力が下位のプレイヤーはポイントが初期の1500からどんどん下がっていってしまう。
スト6 マスターにいってから100連敗くらいしてマッチングしない領域に・・・心が・・心が・・・
— 押切蓮介 (@rereibara) 2023年8月5日
実際、『ハイスコアガール』で知られる漫画家の押切蓮介先生は、マスターに到達したものの、マスターリーグで心をベキベキに折られている様子。おいたわしや。
もし自分がマスターランクに到達してたとしても狩られる側になる可能性は限りなく高い。果たしてそれでもランクマをやり続けられるだろうか。
おそらくそれでモチベーションが下がってしまったプレイヤーの内の一定数が、レーティングの無いバトルハブ(いわゆるロビーマッチ)に流れていったのだろう。
以上のことが事実だとすれば、マスターリーグにはランキング上位を目指す上級者と、負けてもいいから上手いプレイヤーと対戦したい高モチベ勢が残った、ということになる。
これはランクマッチの対戦環境としてはかなり理想に近いのではないか。
もちろん究極の理想は、全てのプレイヤーがランクマッチを楽しめることではある。全プレイヤー中の正確な実力を反映できる、という意味でも。
とはいえ実力を反映させる必要があるランクシステムでは、誰かが不満を抱くのは避けがたいだろう。
前作『ストV』のランクシステムは、最上位のプレイヤーにはあまり評判が良くなかった。
ランクがダイヤモンド以上のプレイヤーが全て無差別にマッチングするシステムだったため、実力の近しい相手と対戦するのが難しかった。
また実力が一定以上あるプレイヤーであれば、対戦の数を重ねるほどポイントが増えていくため、ランクのポイントが実力ではなくプレイ時間を反映している、と言われていた。ついた別称が「暇人ポイント」。
なので大会に出るレベルの上位プレイヤーはランクマッチをプレイせず、ラウンジマッチなどを利用する傾向があった。
ただしポイントがドンドン増えていくシステムには良い面もある。ポイントを増やすことに価値を感じるプレイヤーであれば、いつまでもプレイし続けられる。
イロレーティングのように、ポイントが下がってモチベが下がったり、いくらプレイしてもポイントが動かなかったり、といったことが無い。実力によって振り落とされることがあまり無いのである。
両者を比較すると
- スト5:万人向けだが上位プレイヤーには不評。ポイントが実力を反映しにくい。
- スト6:上位プレイヤーに好評。ポイントが実力を正確に反映する。ポイントが下がる層には不評?
といったところか。
スト6の場合、ランクマッチがしんどいのであればバトルハブに行く、という手がある。ランクとバトルハブ、2つのモードが成り立つのも人口が多い現状のスト6ならでは。
ただ懸念があるとすれば、ロビーに流れたプレイヤーがどこまで楽しめているのか、そして今後もプレイし続けるモチベが保てるのか、という点。
未だかつて「理想のマッチングシステム」を実現した対戦ゲームはおそらく無い。
仮にシステムそのものの完成度が高くても、人口の推移や他のモードとの兼ね合いといった別の要素によって、上手く機能しなくなるかもしれない。
その中で、現状のマスターリーグは比較的理想に近く見える。果たして今後はどうなるだろう。